すべりこみZ席 ~ 新国立劇場小劇場「ねじの回転」
2002/9/28

公演のチラシ

予想が見事に的中。30分前に並べば大丈夫という読みどおり、わずか10席のZ席1500円をゲット。ただし9枚目(あぶない、あぶない)。大劇場よりも価格面でのレバレッジが大きいし、レアもの演目を当日買いする人は少ないので、これは狙い目だ。

雨の中出かけた初台、新国立劇場に着いてみると、結構な行列。今日は「ナクソス島のアリアドネ」の会員先行前売りの日、それにバレエ(ローラン・プティの「こうもり」)のZ席もあるし…

新国立劇場名物、発売15分前の列分け。6割を占める「ナクソス島のアリアドネ」の列から、まず離脱。そして3割が「こうもり」で、その列からまたも離脱。分裂を重ねて「ねじの回転」を求める人の9番目と判明する。今日は小劇場Z席全席を新国立劇場窓口で発券。時間勝負のZ席販売は、大劇場だと端末打ちまくりでも、首都圏5か所の「ぴあ」にも購入者がいるので、62席中50も行けば良いほうだ。

私の前に並んでいたおじいさん、
 「えっ、ねじの回転は明日じゃないの」
 「いや、今日と明日ですよ」
 「あ、それなら、こうもり止めて、ねじの回転にしよう」
 これで、目の前で終了だったら、泣くに泣けないところ。

神田から来ているというこのおじいさん、Z席の常連のひとり。新国立劇場の天井桟敷の風景と化している。私は、天井桟敷でこの方を見かけなかったことがない(あまり人のことは言えないが)。

「メットの天井桟敷に年格好から風貌から、あなたにそっくりの人が毎晩来ていましたよ。いつもお見かけすると、それを思い出すんですよ」
 「あっちでも、その日に劇場で売り出しかい?」
 「土曜の朝に向こう一週間の立見席を売っていました。いつも、6ドルの立見を買って、ちゃっかり座って観ていましたけどね」

さて、「ねじの回転」という珍しいブリテンの作品。

そう言えば、ませた高校生の時にヘンリー・ジェイムズの原作を読んだが、さっぱり面白くなかった。幽霊話なのだが、延々と心理描写が続き、途中でつまらなくて投げ出した覚えがある。視覚化されたオペラは、その点わかりやすい。ちゃんと幽霊まで出てきて歌うんだから。

昨年4月に観た舞台の再演だが、今回は舞台芸術国際フェスティバルの一環ということだ。これは、演出がとてもよくできていて、印象に残っていたので、再度足を運ぶことにした。

新国立劇場の小劇場を上下二層、前後二面に分けて紗幕で区切り、スライドを当てることで場面の転換、室内外の使い分け、同時進行等を上手に見せている。

出演者は昨年と同じ。ダブルキャストなので、昨年私が聴いた日とは異なる歌手陣だったが、なかなかの出来だ。顔ぶれは、遠藤久美子(家庭教師)、加納里美(家政婦)、鵜木絵里(少女)、杉田美紀(少年)、悦田比呂子(元家庭教師)、高野二郎(悪魔)、松岡究(指揮)、平尾力哉(演出)というもの。

男女のこども役は、ちゃんと小柄な人を配し、視覚的にも全然違和感がない。歌も、この二人は出色だった。

テノールひとりで、あとは女声ばかり。しかも音域、音色が近いので、ちょっとコントラストが弱いのだが、そこは舞台から10mと離れていない真横のバルコニー席なので問題なし。

オーケストラは僅か13人(東フィルメンバー?)のアンサンブル、小劇場にはぴったりの出し物だ。さすがに、二度目の鑑賞となると、耳に馴染んでいるせいか、舞台だけじゃなく真下のピットの各ソロを聴くのも楽しい。ブリテンって、よく聴くと、すごく雄弁な音楽を書いている。

これまでに観た「小さな煙突掃除夫」、「カリューリバー」、「アルバート・へリング」も小編成だったし、ブリテンが比較的よくやられるのは、その辺にも理由がありそうだ。

舞台がはねたあと、ちょうど中劇場では6時開演のヴォーン・ウイリアムス「恋するサー・ジョン」のお客が集まりだした頃、安価な当日券もあったので、一瞬"イギリスのはしご”という考えも浮かんだが、ダブルヘッダーはきつい、何とか思い止まる。

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