二期会公演「ポッペアの戴冠」 ~ 正邪の彼岸?
2002/10/6

公演のチラシ

北とぴあ・さくらホール、二期会の新進歌手によるニューウェーブオペラ、モンテヴェルディの歌劇「ポッペアの戴冠」に行く。日曜日、二日目の公演。

指揮とチェンバロが鈴木雅明、バッハ・コレギウム・ジャパンが初めてオペラのピットに入るという、前評判の高い公演だった。装置・衣装・照明・演出などに対する評価が高かったようだが、確かに美しい舞台とは言え、登場人物がやたらに動かす舞台四隅の胸像の意味がさっぱり判らず、「何をやっているんだろう」といぶかしく思った。プログラムには説明があるのかも知れないが、買うことなどほとんどないもので…

まあ、しかし、インモラルなお話。

最高権力者に倫理を求めるのは無理ということは、史実に事欠かないが。奥方を捨てて他人の女房を奪い、その亭主は追放、諫言する腹心は殺してしまう。どっこい、権力志向の女もしたたか、ちゃっかり後釜に座るこっちの方がよっぽどワルか。とまあ、不倫礼賛、悪徳の栄え。一方、音楽はあくまでも美しく…。

私が印象に残った歌手は2人、いや3人かな。

まず、オッタヴィーアを歌った神谷美穂さん。 この人の歌には、ドラマが内包されている感じだ。声に芯がある。どの歌手も、よく練習していて、とても上手なのだが、神谷さんは歌でドラマを表現する(当たり前だけど)。メンバーの中で一頭地抜けていた。

次に、愛の神の嶋村友美さん。魅力的な声です。この二人、アメリアとオスカル(ウェルディ「仮面舞踏会」)を演ったら、いいだろうなあ。

セネカの斉木健詞さん。気になる歌い手だ。あまりいいとは思わなかったて。でも、可能性を感じさせる。声が、音域によって三種類ぐらいになっているようで、連続性が感じられない。こういう声が出るはずと思うところで、違うなあ、あまり美しくない音色になってしまう。まだ発展途上なのか。これから、どんなふうになっていくか。

この公演、鈴木雅明とバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏が主役と言って差し支えない。舞台上よりも、ずっと歌っている。感情の襞がピットで先ず表現されて、それが舞台上に伝播するという感じだ。

何を隠そう、ただの一度も聴いたことのない曲だし、事前にCDで予習するなんて真面目な聴き手でもないので、いい加減な感想になる。アラン・カーチス版による日本初演と言われても、私はこれが始めてのことだし、違いがわかろうはずもない。

聴いていて思ったのは、イタリア語って400年ぐらい前から、あまり変わっていないんだなあということ(それに比べて日本語の変わりよう)。午前中、イタリア語の試験を受けていたので、よけいにそう感じる。でも、もうちょっと真面目に勉強しないと…だから、落っこちる。

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