新国立劇場「ナクソス島のアリアドネ」 ~ 幸田ツェルビネッタ、再び
2002/12/15

夜も明けやらぬうちに並んだ新国立劇場当日券(Z席1500円)の列、その短いこと。早起きしなくてもよかった。いつものように大きな折りたたみ椅子と、開門前の寒さ対策のシュラフ持参の完全装備。山登りの道具も、こんなところで役に立つ。

公演のチラシ

それにしても、発売の10時を過ぎても残っていたのではないかな。R.シュトラウスはやはり人気がないのかなあ。オール日本人のBキャストだからか。

ところが、AB甲乙つけがたい水準の公演だ。このBキャスト、バランスが取れている。脇役陣はこちらのアンサンブルが勝る部分も。

とにかく、この人を目当てに行った訳なので、幸田浩子さんのツェルビネッタについて書こう。武蔵野でのリサイタルは先月末。そこでもツェルビネッタのお披露目がプログラムに組まれていたが、新国立劇場の舞台では、かなり印象が異なる。

プロローグ、あれっと思うほど、彼女の存在感が薄い。仕草、表情、動き、何となくぎこちない感じがつきまとい、歌自体はきちんとしたものなのに、舞台上から発するオーラがない。ヨーロッパでの経験は積んできているらしいけど、まだ発展途上ということだろうか。

「オペラ」のほうでも感じたのだが、髪型に問題があるような気がする。別キャストのシーデンではチャーミングに感じたヘアスタイルが、幸田さんには似合わない。とても美人なのに、どちらかと言えば日本的な造りの顔だから、彼女に合わせたメイクにすればよいのにと残念だ。

あまり出しゃばらないという美徳なのかも知れませんが、彼女の一人舞台となる例の超絶アリアでは俄然生彩を発揮した(それまで周りを立てていた?)。

開演直前に食事をしたからか、早起きのせいか、時々居眠り状態だった私だが、アリア直前の一瞬の休止で目が覚めた。不思議なもの。ドカンと一発のトゥッティじゃなく、音が止まった時に…。この一瞬に新国立劇場の空気が変わったのを感じる。そんなものか。緊張と、期待と、不安と…

武蔵野のリサイタルとはかなり違う表情づけ、オペラの舞台だと当たり前だが振幅が大きくなる。二週間前よりも、スケールが増している。大喝采。さすがに初日にはなかった、騙しのエンディングでフライングの拍手が出たが、これも休日マチネだから仕方ないか。天羽明恵さんが新日本フィル定期で見せたように、「まだよ」というおどけた仕草で制止するぐらいの余裕がそのうちに出るだろう。

他のキャスト、アリアドネの岩永圭子さん、作曲家の白土理香さん、バッカスの成田勝美さん、総じて好演だったと思う。岩永さんのアリアドネは私は三度目。思うに、アリアドネを演じるソプラノは、どうして皆さん立派な体格なんだろう。今回のツヴェタコヴァと言い、ジェシー・ノーマンと言い…。スリムなアリアドネはあり得ないのかなあ。それと、全曲での歩行距離はトータル50mにも満たないのではないかなあ。歌で消耗するから、動きは省エネ。そういうものなんだろうか。

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