新日本フィル定期「聖セバスチャンの殉教」 ~ おっと、これは語りが主役!
2002/12/19

公演のチラシ

ただの一度も聴いたことがないドビュッシーの「聖セバスチャンの殉教」オラトリオ版。語りが入るということは、各ナンバーの繋ぎをやるんだろう程度の考えでトリフォニーに向かうとは何とも無謀なこと。しかも、フランス語は全然だめなのに…

そう言えば、昔、東京フィルのオペラコンチェルタンテで「ペレアスとメリザンド」を聴いたとき、何度も居眠り(いびき付き)をして隣のおじさんに突つかれた苦い思い出がある。あれは海外出張の直後の時差ボケという事情はあったにしても…

70分もの長さの曲なので心配したが、ノー・プロブレム。アンヌ・フルネさん(指揮者のジャン・フルネさんの身内?)の語りのリズムと響きに、ぴったりと寄り添うオーケストラ、この響きだけでも眠くなることはない。語りはあくまでも語りで歌うことはないのだが、歌う以上に雄弁な語りだ。リブレットは立てているが、顔を私がいる三階席の方に向けて、ほとんど暗譜(?)。プログラムを見たらコメディ・フランセーズの女優というから、それは当たり前か。間違いなく彼女がメインのソリストだった。

第一曲「ユリの中庭」のエンディングのブラスの柔らかなクライマックスの音、第四曲「傷つけられた月桂樹」の精妙な木管・弦の重なり、全く初めてなので、細部は論評できないにしても、各所に何とも言えないドビュッシーの音がある。フランス語独特のモゴモゴした感じの響きは、開放的な音のイタリア語に馴染んでいる耳には、最初は違和感があっても、だんだん慣れて心地よくなってくる。オーケストラの音もそんな感じ、終曲の最後になって初めて開放的なクライマックスの音になり、これがとても印象的。

ソロは、ソプラノ浜田理恵さん、メゾ・ソプラノ磯地美樹さん。この二人、第一曲の「ユリの中庭」でデュエットになるときは、とてもよく似た声質でほとんど区別がつかないほど。三階席からの遠目では、どっちが浜田さんかなという感じ。写真で見るショートカットじゃなくて、今は髪を伸ばしているからなおさら。私はショートのほうが好きだなあ。ジョヴァンナ・ダルコを歌ったときなんて、ぴったりだったもの。

まあ、髪型はともかくとして、この人は高音はもちろんのこと、低いところも豊かな響きがあって、とても好きな声だ。フランスで活躍しているだけに、こういうレパートリーは得意分野なのかも。私はびわ湖ホールで、エリザベッタ・ディ・ヴァロア(「ドン・カルロ」五幕版)で最初に聴いたし、続くジョヴァンナ・ダルコといい、ヴェルディのソプラノのイメージを持っていた(ただ、この二役とも、フランス人ではあるけど)。

プログラムとは別に対訳冊子が配られていたが、やはり字幕を出して欲しいなあ。暗いところじゃ読めないし、ページをめくる音もうるさいし。あれだけ長い語りなんだから、リアルタイムで大意が判れば、もっと深い聴き方も可能だと思うし…

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