マルクス・ブリュック リサイタル ~ 武蔵野「冬の旅」
2003/1/5

2003年のライブ第一弾。今年も何度出かけることやら。時節柄、「冬の旅」でスタートというのも、ふさわしいかな。

公演プログラムの表紙

マルクス・ブリュックという若いドイツ人バリトン、もちろん、私は武蔵野文化事業団からのDMを見るまで、名前も聞いたことがなかった。

「今回、武蔵野公演のために初来日を果たした」とプログラムにあったので、それも無理もない。経歴を見ると、カイザースラウテルン、ヴィスバーデンを経てベルリン・ドイツ・オペラの専属ということで、着実にステップアップしている人のようだ。1972年生まれということなので若い! その間にバイロイトで急な代役でベックメッサーを歌ったこともあるらしい。来年には今をときめP.コンヴィチュニー演出の「ヴォツェック」をハンブルクで歌うとか。

この人、若いくせにドタドタとステージを踏みならして登場した姿は、立派なお腹、そのままファルスタッフをやれそうだ。

ところが、第1曲「おやすみ」開始のピアニシモの繊細なこと、体に似合わない。今でも高音域は美しいけれど、まだ磨きをかける余地はある。中音域・低音域の響きの美しさは魅力的だ。美声のバリトン。

「菩提樹」に続く第6曲「あふれる涙」などのフォルテでみせる強靱な声、とても振幅が大きく、24曲、ちっとも飽きさせない。第1曲では、ピアノの上岡敏之さんの表情の大きさに比べて、歌が少しおとなしいのかなと思ったが、それはとんでもない間違い。曲が進むに連れて、どんどん振幅の大きさが出てくる。やはり、24曲続けて歌うのは若さが持つパワーが必要だなあ。オペラに匹敵するドラマティックな歌唱だったと思う。出かけるのは大半がオペラという私には何の抵抗感もないが、いつもリートを聴いている人なら違う印象を持ったかも知れない。
 ベックメッサーもいいだろうが、この人のヴォルフラムなんて、是非聴いてみたいなあ。

武蔵野市民文化会館(小ホール)は二度目、聴衆の平均年齢が異様に高い。別にそれは悪いことじゃないが、もっと若い人に素晴らしい歌を聴いて欲しいような気もする。何しろ今日のリサイタル、2500円なので地元会員のお年寄りで客席は占拠状態だ。

プログラム、アンケート、それに今後のコンサートチラシが数枚、入口で配るのはいいけど、演奏中にシャカシャカとうるさいこと。お年寄りのことなので、こういう自分が立てるホワイトノイズが判らない(聞こえない)のだろう。何席か離れていても気になって仕方がない。たぶん歌い手の繊細なピアニシモも、お年寄りの耳には届かないかも知れない。

会員の年齢層を考慮して、チラシなどの配布は公演後にするか、身の回りの品物(コート、バッグ、紙袋)の持ち込みを制限するとかの対処が、このホールでは必要だと思う。さすがに年明け早々、天命を知る歳も過ぎた私としては、楽しんでおられるお年寄りに余計なことは言わなかったが、武蔵野市民会館には意見具申するつもり。これだけ魅力的なプログラムを安く提供してくれているのだから、なおさらのこと。

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