マグタレナ・コジェナー リサイタル ~ とっても素敵なお年玉
2003/1/10

2003年の初めは、歌曲リサイタルが続く。これは、私にしては珍しいこと。マグタレナ・コジェナーは17日のオペラシティでのリサイタルを早々に購入していたが、ひょんなことから一週間早くなった。それと言うのも、チケット掲示板に当日の格安の出物を見つけたから。

ホセ・クーラのオテロ、ふーん、29000円を10000円で、時価は半額ぐらいだから、大幅割引なんだけど、5000円だったら考えてもいいけど…。えっ、トッパンホール、コジェナー、に、にせんえん!これ、小ホールじゃないの!確か全席6000円のはず。こ、これは、鞍替えだあー。17日は釜洞祐子、井原秀人、若杉弘の「光」も聴きたいし…

うふふ、大正解。素晴らしいリサイタルだった。そして、な、何と前から二列目。
 リサイタルの曲目は、最後のマーラー以外は聴いたこともないものばかり。ピアノ伴奏はマルコム・マルティノー。

エベン:6つの愛の歌
 ドゥシーク:愛の嘆き
 レースラー:幼い頃の恋/去っていった人へ
 ヴォジーシェク:別れの涙/かわいい小鳩
 ドヴォルザーク:4つの歌op.2
   --- 休憩 ----
 ブリテン:子守歌のお守りop.41
 デュバルク:旅への誘い/悲しき歌
 ラヴェル:2つのヘブライの歌
 マーラー:子供の不思議な角笛
  ~ラインの伝説/原光/高い知性への賛歌

親しみのない曲が多いのに、全然眠くなることなし。どころか、これだけ集中して聴くことも珍しい。

登場した彼女、写真よりも、実物のほうが、ずっと美人。1973年生まれとのことなので、まだ20代か。スリムな体を鶯色のシンプルなドレスに包み、見とれてしまう。ブロンドととてもよくマッチしている。いったい、私は、何を書いているんだろう。さあ、音楽。

プログラム冒頭のエベンは彼女の強い希望により、前に持って来たとのこと。聴いてみて判る、6曲もあるし、言葉のニュアンスを活かしていると思われる曲想も地味目で、リサイタルの初め、集中力の高いときに聴いて欲しいということなんだろう。なかなか頭のいい人のようだ。

また、このプログラムはチェコ語のものを中心に、ドイツ語、フランス語、イタリア語、英語、果ては日本語(アンコールの最後に歌った「浜辺の歌」)まで出るという多彩なもの。日本語の発音自体には違和感があるが、この人の歌はベースとなる音楽のフォームがとてもしっかりしている。単にサービスとして歌うというのではなく、これだけメロディラインが美しく強靱な歌は、日本人でもちょっと聴けないのでは。

イタリア語の歌もあったはずなのに、私はほとんど気づきませんでした。これは変だ。ドイツ語、フランス語は立派だと思ったが、英語の発音は今ひとつ。チェコ語については判らないが、彼女の母国語だし悪かろうはずはないのだろう。

言葉については、そんな感じを受けたが、普通であれば不明瞭さに嫌悪感があってもおかしくないのに、それが、彼女の場合にはない。これは稀有なこと。いささかの崩れもないフォームと、発音の不備を補ってあまりあるテクストへの傾斜、そして、何と言っても、極めて広い音域、どこをとっても欠点が見あたらない発声、音色の美しさ、ここ一番のパワーにも不足しない。どの曲も素晴らしい完成度だ。

オペラの舞台にも立っているようだが、彼女の軸足は歌曲なんだろう。それにしても、このプログラムでリサイタルを打つとは、並みの歌手では無理だろう。

アンコールは三曲で、予想どおりの「我が母の教え給いし歌」と、「浜辺の歌」の間に歌ったヤナーチェクの歌曲には驚いた。曲名は聞き漏らしたが、速いテンポの歌の中で、とても細かいルバート(だと思う)が見事に決まる。唖然とするテクニック。

私にチケットを譲ってくださった方は、今回のコジェナーの来日公演、全てを聴かれる予定とか。オペラシティではプログラムも変わるし、私はチケットを手放すのがだんだん惜しくなってきた。でも、釜洞さんも聴きたいしなあ。

初めて訪れたトッパンホール、素敵な小ホールだ。ニューイャーコンサートということで、休憩時間にはフリードリンクのサービスという大盤振舞。嫌いな方でない私は、シャンパンを三杯もいただいてしまった。それでも後半も目はパッチリだったのは、彼女の歌の素晴らしさに尽きる。普段そんなことはしない私も、終演後に並んで彼女のサインもらう。

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