武満徹とフォーレの「レクイエム」 ~ この日が命日ですか?
2003/2/20

しばらく前に某新聞で見た招待券プレゼント情報。

「これは絶対に当たるよ。さあ、はがき書こうぜ」
 「僕も出そうと思っていたんですよ。フォーレのレクイエムは名曲ですよ」
 「フォーレのレクイエムって、聴いたことないんだよな。どんな曲?」
 「えっ、えーーーーっ! 声楽なら何でも行ってる人が…」
 「そんなこと言ったって…、オペラならともかく…」
 「しっ、信じられない~! 僕でも、ナマで三回ぐらい聴いてるのに!」

私の予想どおり、10組20名様ご招待ということなのに、T君ともども当選。
 「でやっ、ゆうたとおりやろ」(なぜかディープな大阪弁)
 「タケミツでは、たくさん人が呼べないんですかねえ」
 「プライドがあるだろうし、50組100名とは書けないものねえ。あちこちで招待券を出したんだろうね。慌ててチケット買う必要はないんだよ」

公演のチラシ

客席は8割方埋まっていましたが、かなりの人が無料だと思う。でも、ヘンなところにばら撒くのじゃなく、公募というステップを踏むことによって、よし聴こうという意志のある人が集まるから、これは正しいアプローチだ。

プログラム前半の武満徹作品も私は初めて。ひょっとして、「弦楽のためのレクイエム」は聴いたことがあるかな。T君に引っ張られて、かなりコアな現代音楽にも足を運ぶようになったので、この作品など、マーラーのアダージョの延長かと思える。げに、慣れは恐ろしきかな。

この日が武満氏の命日に当たるということらしい。もう没後7年か。サントリーホールでの自作の演奏の時には、客席では当然にしても、隣のANAホテルでお見かけしたことがあった。

演奏は徐々に尻上がり。前半のタケミツよりも、後半のフォーレ、さらにレクイエムも後の方が、より美しい響きだったように思えた。ソリストの出番は多くない。私は佐々木典子さんの歌は文句なしだったのですが、大島幾雄さんには少しがっかりした。オペラの舞台と違って、こういう曲では資質がはっきりと出る怖さがある。単に経験が不足しているのかも知れないが、こういう曲に期待したいピュアな響きには距離がある。私には美しさが感じられなかった。

コーラス、オーケストラは総じて好演だったが、圧倒的な感動があったかとなると、そうでもないなあ(タダで聴いていて、あまり文句言っちゃいかん)。私は教会でレクイエムを聴いたことがないので比較できないにしても、オルガンのブスッと余韻が切れるところは、今ひとつと感じてしまう。このタケミツメモリアル(東京オペラシティコンサートホール)は比較的デッドな響きで、それ自体は、私は好きなんだが、オルガンとの相性は良くないのではないだろうか。

プログラム前半、「夢の縁へ」(ギター独奏付きのオーケストラ曲)の後、ソリスト鈴木大介さんが弾いたのは、武満徹が編曲したギターソロによる「ラストワルツ」。なかなか面白かった。私の大学のクラブ(音楽関係じゃなく山登り)の1年先輩にプロギタリストの人がいるので聞いてみたが、この曲のことは知らないということだった。まあ、ジャンルが違うからかなあ(その人は小泉清人さんと言って、斯界では日本のウェス・モンゴメリーとか言われている人)。

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のコンサートは初めてだったが、とにかく、来てくれたお客を大事にしようという気持ちが伝わってくる。矢崎彦太郎さんの舞台配置転換の際のトーク、チケット座席番号によるワインプレゼント(20本ぐらい当たり!)とか、ユニークだ。競争が厳しい東京なので、そういう努力も大事なんだろう。残念ながら、私はワインは当たらず(タダで聴いてワインまで貰ってどーする)。

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