岩城宏之/東京フィル/ラフマニノフ ~ これは大変な名演!
2003/2/22
中野から渋谷へ、ダブルヘッダーとは、我ながらよくやるよという感じ。別に好きな作曲家でもないし、普段なら好んで足を運ぶことはないのだが、オール・ラフマニノフという珍しさ、そして指揮者の名前を見て、これは即「買い」と、早くからチケットを手配していた。
オペラのピットも含め、私は東京フィルをこの2年間かなり聴いているが、今夜の演奏は、群を抜いて(ベリー)ベストだと思う。こういう曲で、ここまで完璧にバランスされた東京フィルの音なんて、まさに目から鱗です。
先日、どこかの競馬場で100万円配当が2本出たとかのニュースがあったが、この日の昼間のオペラと夜のオーケストラ、そんな感じだ。
最初の練習曲「音の絵」の弦の精妙なハーモニーから、その予感はあった。私は思わず椅子に座り直した。
「パガニーニの主題による狂詩曲 」の広瀬悦子さんのピアノ、弦のピッチカートを思わせるような粒だった音、中間部のたっぷりと歌いながらも情緒に流されない表現、オーケストラとの絶妙の間合い。これはまさに聴きもの。
後半の交響曲第2番、岩城さんの希望でノーカット版の演奏。こんなつまらない曲(ファンの方には叱られる)を、さらに長くしてどうするのという気持ち無きにしもあらずだったが…
いやあ、恐れ入りました。全く長さを感じさせなかった。どころか、えっ、もう終わりなのという感じ。何という各声部のバランスなんだろう。そして、テンポの自然さ、適切さ。気の抜けたようなフレーズを奏でる奏者が誰もいない!これ、本当に東京フィルなの?
ちっともやかましくない強奏、もちろん、音のエネルギーは充分なのだが、変に耳を刺激することはない。岩城さんは大げさな仕草をするわけでもないのに、きちんとツボを押さえたクライマックスが鳴り響く。
今夜は、本物のオーケストラを聴いたという実感があった。
蛇足ながら、この日、上野で「カルメン」のピットに入っているのも東京フィル。あちらは、一体どうなっているだろう。