二期会「カルメン」 ~ 小山&福井、新国立劇場を凌ぐ熱気
2003/2/23

この時期、二期会、藤原歌劇団のオペラ公演は、文化庁助成があり、チケットが安くなるのでありがたい。2000円のチケットで出かける。年度末に支出というのがお役所らしいところ。

公演のチラシ

さて、今回のカルメン、昨シーズンの新国立劇場のプロダクションを上回る出来映えだ。何はさておき、題名役の小山由美さん、福井敬さん、全力投球の熱気あふれる舞台だった。

小山さんは、昨年のワルキューレのフリッカで藤村実穂子さんとのダブルキャストで聴き、実力を知った。全くキャラクターの異なるカルメン、どうなんだろうと思ったが、杞憂。情動に走らず、しっかりとしたスタイリッシュな歌唱だ。この役にありがちな崩れがない。私の期待以上だった。

福井さんは言わずもがな。パッションと歌のスタイルのバランスの良さ、最近は本当にハズレがない。ピークを迎えていることを強く感じる。テノールのキャリア最良のときを聴けるのは長くはない。今聴いておかなくっちゃ。

カルメンとドン・ホセの二人がよければ(ほぼ)大丈夫というオペラなので、私は満足満足。

エスカミーリオの黒田博さんは、歌も演技も今いち存在感に欠けるが、まあ、そういう役だし、いいんじゃない。

不満だったのは、ミカエラの松田昌恵さん。初めて聴く人だが、ミスキャストだろう。声量もあるし美声、でもメロディラインが破線か一点鎖線のようになって聞こえる(語幹部分が強すぎてメロディが死んでいる)のが致命的。この役をやれる人材は、あまたいるはずなのに、なぜこの人、ちょっと理解出来ないところ。

心配した東京フィル、失礼しました、立派な演奏だった。普段はあまり意識しないような管楽器の短いフレーズにも生気があふれていた。昨夜の定期演奏会の裏メンバーのままなのかどうか判らないが、完全に分けていたとしたら、大したものです。飯森範親さん、やるじゃない。もっとも、彼は日本で唯一のオペラハウス専属オーケストラの常任指揮者だったので不思議じゃないが…
 大阪豊中のカレッジオペラハウスで、昔から聴いてきた者としては、うれしいもの。黒じゃなく紫がかった紺の燕尾服、臙脂のカマーバンドとくれば、こりゃサイモン・ラトル張りだ。

今回の演出は実相寺昭雄さんということで、どんな新機軸が観られるかと期待していたが、意外にオーソドックス、驚きはない。回り舞台を駆使した装置、階段を利用した立体的な造り、パスティアの酒場は四階建てというのは珍しかったが、ドラマとの関連での意味合いを感じるには至らない。終幕のカルメンとドン・ホセの場面では、よくある群衆の登場を排し、二人のからみで幕を下ろしたのは賛成だ。

休憩時間、終演後、至近距離で伊原直子さんに遭遇。この方のカルメンも私は聴いたことがあるはず。後輩たちの演奏、どんな感想だったのかしら。

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