飯守泰次郎/関西フィルのチャイコフスキー ~ 季節はずれも、いいもの
2003/7/9

梅雨明け前、とっても蒸し暑い大阪、そこで「冬の日の幻想」(チャイコフスキーの第1交響曲)を演奏するというのは、ちょっとしたギャグ。でも、いい暑気払い。そんな演奏だった。

公演のチラシ

この作品、生で聴くのは初めてだが、中学生の頃、レコードで何度も繰り返し聴いた曲です。チャイコフスキーのシンフォニーでは第6番は大傑作にしても、私は演奏機会の多い第4番や第5番よりずっと、この第1番が好き。何年ぶりかで聴いて、とても懐かしい気持ちになる。しかし、そこは生、こんなダイナミックスだとは。

飯守さんが関西フィルを振りだしてもう3年ぐらいだろうか、オーケストラとの呼吸もいい。小気味のいいリズム感、音楽の一部になったポーズの置き方、昨日や今日の客演では無理だと思う。

第4楽章の序奏から主部に移るところ、だんだんテンポアップするところで、ひゃっとするアンサンブルの乱れが感じられたが、それ以外は問題なし。第2楽章の後半で、ホルンが朗々と主題を奏でる箇所、ここはそれこそ表題どおりのロシアの冬を感じる部分だが、弦の伴奏を強調しすぎのような。私はもっと薄い伴奏で、ホルンだけが響くほうが好ましいと思う。しかし、第2楽章を通して飯守さんの歌が聞こえて来るのも、いいような悪いような。舞台横の三階席だったもので…

最終楽章終結部の盛り上がりは凄まじいもの。これは生でなければ味わえない。この曲を、定期演奏会のメインプログラムに採り上げるというのは尋常ではない。大好きな曲を初めてライブで聴けたことに、感謝。

さて、休憩前のプログラムは、神尾真由子さんのソロでのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。よく鳴るストラディバリです。音色も美しい。テクニックも素晴らしいものだと思う。しかし…

芳紀十六歳ということなので、まだまだこれから伸びる人だと思うが、私は、弾き飛ばすという感じ、歌い崩すという感じが気になる。コンマゼロ以下の長さで、伸ばしすぎ、続く音がその分縮む。そのためか前後の強弱がつきすぎる。メリハリのある弾き方と見る人も多いかも知れないが、私には美醜の境目を逸脱したところを感じる。ピンクの美しいドレスと裏腹な…。これ、メンデルスゾーン?

プログラムを逆に辿って、冒頭は貴志康一の「大管弦楽のための日本組曲」より「花見」「道頓堀」というご当地ナンバー。関西出身の夭折の天才として名前だけは知っていたが、聴くのは初めて。ベルリン・フィルを指揮した自作自演のSPもあるそうだ。

これは、とっても面白かった。「花見」は「さくらさくら」がモチーフとして使われていて、その料理の仕方など、プッチーニを凌ぐのでは…。「道頓堀」のダイナミックさも素敵、コーダの持って行き方は天才的。享年27歳、長生きしたら、いったい、どうなっていただろう。

この「道頓堀」を聴きながら、間近に迫った水都大阪の天神祭をイメージするのではなく、早ければ八月中にも予想されるトラキチの道頓堀川ダイブを思ってしまった(私はトラキチではない、念のため)。

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