大植英次/大阪フィル@いずみホール ~ ほんとのシーズン到来!
2003/9/12

少し前の産経新聞夕刊一面に載っていた記事によれば、大植英次氏はホテル暮らしをやめて年内に大阪に居を構えるそうだ。大阪に骨を埋めるつもりだとか。また、大阪フィルのメンバーと市内の全ての中学校を回る計画もあるとのこと。ミネソタでそうだったように、名実ともに我が街の音楽監督を目指すとの弁。ドイツ(ハノーファーに加えバイロイトなんてのも)と日本を股にかけた活動になるようだが、大阪もいい人を見つけたものだ。

公演のチラシ

音楽監督就任定期演奏会(マーラーの「復活」)から間が空いて、この秋から大植監督の一連のコンサートが始まる。その第一弾、いずみホールでの演奏会、プログラムはなかなか変わっている。
 ハイドン/交響曲 第100番 ト長調「軍隊」
 バルトーク/ディヴェルティメント Sz.113
 ドヴォルザーク/スラヴ舞曲 作品46、作品72

後半のメインプログラムにスラヴ舞曲を据えるとは異色、えっ、しかも、全曲。と言うことは、えーっと、16曲、それだけで一時間を超すプログラムだ。

最初のハイドン、弦楽器は8-8-6-4-2の対向配置で、大植さんは指揮棒なし。実演では私は初めての曲、あの乾いた打楽器は大太鼓の縁を叩いていたのか。なるほど。

オーケストラのアンサンブルがよくなったなあ。ほんと。弦楽器の音圧の微妙な変化は、昔の大阪フィルではあまり聴けなかったものだ。それが、最高度に発揮されたのは2曲目のバルトーク、この歳にして初めて聴く、これは傑作だ。変拍子、不協和音、エキゾチックなメロディ、緩急、見事なミックス。作品の魅力か、演奏の冴えか、判然としないが、今夜の白眉。奏者はヴァイオリン2、ベース1が加わり、配置は変わらず、この曲からは大植さんは指揮棒を使用。

後半のスラヴ舞曲は、オーケストラも指揮も、そして聴衆もノリがよく、長さを感じさせなかった。全曲だと、さすがに聴くほうもつらいんじゃないかと思ったが、一曲一曲の表情付けがライブならではで、飽きさせない。テンポは相当に揺らしていたし、音量の変化も目一杯の感じ、それでもあくどさを感じなかったのは、速めのテンポですっきり歌わせるという全体のトーンのせいか。奏者の配置はオーソドックスなタイプに変わった。

ほぼ満席、800人の聴衆が肩肘張らずにリラックスモードで聴けたのは、指揮台の大植氏の絶妙の合いの手が雰囲気を和らげたから。作品46では、途中に客席を振り返り、「次は5曲目!」、8曲終わって、拍手が巻き起こると、ニコッと笑って「まだ8曲、あります」、そして「あと、4曲」、第7曲に移るときには、左手でVサイン(阪神のマジックナンバーじゃない)、そして終曲の前には、「あと一球!」じゃなく、「これで、最後!」

確かに、そうでもしなければ、今どこまで行ったっけ、というのが普通だろう。まあ、暗譜でよくまあ順番を間違えないこと。雨も落ちて蒸し暑い大阪なのに、オーケストラは途中ピッチ合わせもなしに16曲連発とはご苦労さま。何か、アスリート系の達成感のようなものがあったようで、大喝采のあとはオーケストラのメンバー同士が握手している。

大植さん、魅力的な人柄のようです。カッコよろしいなあ。後ろの席のおばさまも、ゾッコンのもよう。阪神頼みじゃなく、音楽面でも大阪活性化に繋がるといい。帰りの大阪城公園駅では、ジュードー(大阪城ホールで世界選手権)帰りの人と合流、時ならぬ満員電車、それでも少し元気が出てきたような。

ホールで、春に定年になられた会社の先輩にお目にかかった。身体障害者だけを雇用する特例子会社の社長をされていた人だ。聞けば、13日に行われる視聴覚障害者のためのコンサートの準備のあと、いずみホールに寄られたとのこと。準備とはバイブレーションを伝える椅子を会場に運び込むということだとか。特に報じられてはいないようだが、大阪フィルの練習場で行われるコンサート、もちろんボランティア、17名の楽団員が手弁当で参加するらしく、大植さんも当日はピアノを弾くようだ。

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