大植英次/小川典子/大阪フィル定期 ~ おおーっ、タイガースドレス!
2003/9/18

あっ、そうか、ベルリオーズの年なんだ(生誕200年)、それでこのプログラム。
 ベルリオーズ/歌劇「ベンヴェヌート・チェッリーニ」序曲
 リスト/ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
 ベルリオーズ/幻想交響曲

公演のチラシ

定期演奏会の会員でなければ、期待の新音楽監督の立ち上がりでなければ、まず行かなかったコンサートだろう。私の好みの曲じゃないし、ザ・シンフォニ-ホールからは帰りが遠いし、というのがその理由。結局、出かけたのは、「チケットがもったいない」からなんだけど、予想をはるかに上回る名演、行ってよかった。

大植さんが大阪フィルの音楽監督に就任して以来、これが三つ目のプログラム。今のところ皆勤賞の私。俊英指揮者がオーケストラを掌握していく過程が手にとるように感じられる。東京から戻るやいなや、定期会員になって正解かな。ことオーケストラでは、彼我の落差を感じずにすみそうだ。

5月のマーラー「復活」では、意欲が先走ってギクシャクしたところも多く感じられたが(特に第1楽章)、この幻想交響曲は、全曲通してまさに人馬一体の感がある。

開始楽章の序奏の素晴らしさ。数日前のバルトークで感じたのと同じ、見事な表情付けです。音色は柔らかでいて芯がある、そして神経の行き届いたアンサンブル、強弱のニュアンス。もうこの部分を聴いただけで、この演奏の成功を確信した。実演で、いいと感じたことのない曲なのに…

第4楽章「断頭台への行進」が終わった瞬間、あちこちで拍手が起きました。こんな有名曲で、しかも定期演奏会で…、初めての経験です。でも、思わず拍手したくなるその気持ち、自然だ。だって、ここは大阪。

またしても、大植流パフォーマンスがいろいろ。

幻想交響曲の開始、いったん指揮棒を構えたのに、それを下ろすと、客席を振り返り、「…関係ないですが、阪神タイガース、ありがとうございます!」と一言、振り向きざまに始めた演奏なのに、オーケストラは平然と上記の素晴らしい序奏になるのですから。いや、まいった。熱狂的ドラゴンズファンの私ですが、大阪人でもあるし、ま、いいか。

終演後、延々と続く拍手に、最後に現れた大植さんは、何と阪神タイガースの法被(はっぴ)姿。客席からファンが手渡すプレゼント、何かと思えば、包みをひっちゃぶいて大植さんが振っているのはタイガース応援タオル。これは、演出だと思うが、しつこくやらずにサッと引くところがスマート、嫌みがない。舞台と客席の距離が一気に縮まる。

休憩前の演目のリストでは、何度も舞台にソリストの小川典子さんと登場したあと、最後はオーケストラに着席を促し、自分は指揮台にちょこんと座って小川さんのアンコールなんて、ニクイ。「亜麻色の髪の乙女」のあいだ、そうやってピアノの陰で、聴いているんだから。

小川さんのリスト、これまた大変な聴きもの。オーケストラのコンサートでは途中に挟まったピアノコンチェルトを(仕方なく)聴いている私だけど、こればかりは凄まじいダイナミクスに圧倒された。このホールで聴いたなかでは一番よく鳴ったピアノのような気がする。力強さだけでなく、終結部の軽やかさなども見事。もう一段小さい音も出してほしいような気もするが、これだけ気合いの入ったオーケストラがバックだと難しいかな。

登場した小川さんを見てびっくりしたのは、彼女は何と、黒とオフホワイトの縦縞のドレス。もしかして、と思ったら、アンコールの曲名紹介の前に「私のタイガースドレス、いかがですか」だって。しかも、そのアンコールが「六甲おろし」序奏つき「亜麻色の髪の乙女」と来れば、完全に大阪人のノリの世界です。ひえーっ、仰天。

今夜もほぼ満席、阪神タイガースにあやからなくとも、大植新監督で大阪フィルがほんとに活性化されてきている。

会社をサッと抜け出したので、開演前に腹ごしらえ。JR環状線の福島駅で降りて、ホールと反対側の駅前のホテル阪神へ。ここの地下にある「はがくれ」といううどん屋で「生じょうゆ定食」。コシのある冷やしうどんに大根おろし、きざみ葱をのせ、すだちを搾って、そこに生醤油を垂らしていただく人気メニュー。かやくごはんが付いて800円。うどんはふた玉までは同一料金で、私は1.5を注文。お腹いっぱい。昼は満員だが、コンサート前だと空いていて、時間のないときはお奨め。

勘定を済ませて、お店を出るときに気づいた張り紙、「優勝記念、ビール中ジョッキ半額250円」。く、くっそーお。ここ数日、星野監督の背番号にあやかった77円コーヒーとか、そんなのが大阪にはいっぱい。

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