大植英次/大阪フィル定期 ~ ごまかしが効かないブラームス
2003/10/31

公演のチラシ

大植さんの定期演奏会への登場は、これが3回目、このブラームス(交響曲第2番)は、成功とは言えなかったと思う。

意図はとてもよく伝わってくる。前音楽監督時代の垢を洗い流して、原点に返り、清新なハーモニーを再構築しようという感じだ。ところが、指揮者とオーケストラの関係は、まだ、そこまでの成熟度には達していない。

前半の緩徐楽章では、相当にゆったりしたテンポで各パートのフレーズを丁寧に弾かせるのはいつものとおり。弦楽器は抑えめで、管楽器を埋没させないように配慮していることが窺える。各セクション毎の独立性を保ち、それぞれが耳に届くようにも気を遣っている。従来、このオーケストラが奏でていたブラームスとは対極にあるようなアプローチだ。分厚い響きの中に各楽器を溶け合わせた、悪い言葉で言えば、ごまかしが効く演奏と一線を画そうとしている。だから、このオーケストラにとっては、かなりきついものがあったのではないだろうか。あまりに楷書的なフレージングで無表情になってしまったり、最近の大阪フィルのレベルからすると、おゃっと思うような管楽器のしくじりが出たりと…。

大植さんは必死にドライブしようとするのだが、オーケストラとうまくシンクロしない感じ。ちょうど、就任記念の「復活」の第一楽章で感じたものと似ている。前回、幻想交響曲の圧倒的な名演を聴いた後だけに、また逆戻りという印象も。
 一進一退です。やはり、時間がかかります。なお、後半の楽章は、尻上がりだったと思います。

前音楽監督の定期演奏会のときには、一部信奉者の熱狂を尻目に、私は鼻白む思いでフェスティバルホールを去るのが通例だった。今夜の演奏会、終楽章のライブならではのアッチェレランド、客席から歓声が起こりましたが、まだ早い。もっと先があるはず…
 ごまかしの効かないアプローチで果敢に取り組む大植さんの意欲は多としたい。これが見事に結実する日が、いつか来ると思う。

プログラム前半はアメリカ音楽、前任地ミネソタの作曲家アルジェントの「ヴァレンティーノ・ダンス」と、バーバーのヴァイオリン協奏曲。
 前者は大オーケストラのためのタンゴという趣き(アコーディオン佐藤芳明)、竹澤恭子さんをソリストに迎えた後者は大変期待したのだが、仕事でドッと疲れた直後のせいか、あまり集中できず。テクニックも素晴らしいが、充実した響きのヴァイオリンではあった。

前回はタイガースにあやかったパフォーマンスが飛び出し、びっくりしたが、今回は何もなし。いくらアメリカ音楽を採り上げたからといっても、ハロウィーンの仮装で登場というわけにもいかないだろうし。

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