イダ・ヘンデル/シュテファン・ザンデルリンク/大阪フィル定期 ~ 異質の配合
2003/11/28

今回の大阪フィル定期演奏会は、高齢のヴァイオリニストと若い指揮者の組合せだ。
 イダ・ヘンデル女史、ポスターやチラシの写真では年齢不詳、戦前から活躍しているということだから、相当なものだろう思われる。もちろん(?)プログラムには生年の記述は、なし。(化粧ができない)手を見れば女性の年齢はだいたい判るが、(オペラグラスで見ると)意外に張りのある感じだったが。
 一方のザンデルリンク氏は1964年生まれということなので、まだ30代。見かけはもっと若く見える(父クルト、兄トーマスも指揮者)。この歳の差のある両人による、休憩前のブルッフのヴァイオリン協奏曲が一番の聴きもの。

ソリストとオーケストラ、はっきり言って異質だ。かと言って悪い演奏ではない。とても面白い。対照の妙、アンバランスの妙と言うか、これもコンチェルトの面白さではないかな。

私自身、昔のヴァイオリニストを聴いた経験はほとんどないのだが、こういう雰囲気なのかなあ。自分の世界がある。ゆったりと聴かせる美音、でも音量はない。ロマン派の代表的な作品だからかも知れないが、しっとりと歌い上げるという感じ。
 オーケストラは、それに合わそうという気持ちはあるのだが、何しろロマン派の時代には影も形もなかった極東のオーケストラなので、すぐに機能性が前面に出てくる。ソロのパートとオーケストラのパートとの受け渡し、音楽がロマン派と現代を往き来している感があった。そのグラディエーションが何とも言えず面白い。

仲間うちで図抜けて上手い人がソリストを務めるようなコンチェルトが多いなか、こういう演奏を聴く機会は珍しいものだ。このジャンルにはあまり興味がない私なのに、この演奏はとても楽しめた。
 演奏後のカーテンコール、孫の手を引いておばあちゃんが楽しそうに歩いているようで、ほほえましい。

プログラムの最初はモーツァルトの交響曲第29番、オーボエとホルンが二本ずつ加わるだけの弦楽主体のこぢんまりとした曲で、あまり好きじゃないモーツァルトの中では、お気に入りのひとつ。フレーズの端々に硬い音があったが、柔らかさで終始一貫するような演奏のほうが私は好み。これが前述のブルッフのオーケストラパートの伏線のような感じ。

後半のプログラムは、R.シュトラウス「死と変容」、「サロメ」より「七つのヴェールの踊り」。ザンデルリンク氏も力が入っていた。各楽器も明晰だ。こんなに屈託がなく健康的な響きのR.シュトラウスというのもないなあ。
 「七つのヴェールの踊り」を聴くと、ロイヤルオペラハウスで観たマリア・ユーイングの衝撃的なステージがいつも脳裏に蘇る私だが、今日の演奏は音響面での華やかさ以上の妄想には繋がらない。

会場でもらったチラシの中に、大阪フィルの来シーズンのプログラム概要がありった。日程と指揮者の発表だけで詳細は明らかではないが、大植英次監督は4回の定期を振るようだ。
 4月に春の祭典、7月の故御大の誕生日に合わせてブルックナー8番、12月にはバイロイトに先駆けて「トリスタンとイゾルデ」、じゃなかった「サムソンとデリラ」、3月にはマーラー6番ということ。もち、私は定期会員、継続!

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