大植英次/大阪フィル@いずみホール ~ 疾走しないモーツァルト
2004/2/5

いずみホールでのシリーズが今回で最後とは、とても残念なことだ。800名の会場での準定期演奏会。ここに相応しい編成とプログラム、いつも楽しみにしていたのに…

掉尾を飾るプログラムは音楽監督のオール・モーツァルト、1・39・41番のシンフォニー3本立てというのもユニークだ。ところが、こんな日に限って仕事が…。オフィスはホールのすぐそばなのに、別の場所でパーティとは。とほほ。
 堂島からタクシー飛ばして駆けつけたら、ちょうど休憩時間、後半のジュピター交響曲だけの鑑賞となる。

さて、大植さん、指揮台に上ったと思ったら、突然こっちを向いて、台の横におりて、「こんばんは!」と始まる。なんか、これ、最近は会場の人も、ちょっと期待しているフシがある。

「今日のプログラム、モーツァルト8才のときの1番、そして最後の41番。変わった組合せみたいですが、ちょっと、これを」と、ホルンを指してひとつのフレーズを吹かせます。そして、次にヴァイオリン。全く同じフレーズだ。つまり、「知られていないんですが、最初と最後のシンフォニーに同じモチーフが使われています」、『栴檀は双葉より芳し』とは言わなかったが、そんなコメント。

第一楽章を聴いて、私はちょっと驚いた。とても重いモーツァルトだ。相当に遅いテンポ。本当はそうでもないかも知れないが、そう感じるのは、テヌートがついた音符が並んでいるような響きだからかな。これまでの定期演奏会でも感じたことだが、弦楽器のフレージングの細部まで振り切ろうとするようなところがある。輪郭がはっきりしているという見方もできるが、私はちょっと過剰を感じる。軽やかなはずの第二主題さえ、そんな風情はない。うーん。これは抵抗感を禁じ得ない。

今夜の大植さんはノータクト、逆に身体の動きが余計に大きくなる。オーケストラが過剰反応しているのか。それだけ、コンビの意思疎通もよくなっているのだろう。ただ、疑問の残る第一楽章、全くスピード感のないモーツァルトだった。ぴたっと決まらないアンサンブルも気になったし。

第二楽章ではイメージがだいぶ違ってくる。第一楽章でひっかかった弦楽器群も悪くない。このあたりから目をつぶって、大植さんの姿を見ずに聴いたからかも知れない。第三楽章、第四楽章と進むにつれて、響きがまとまって、音楽の流れがスムースになっていく。終楽章は素晴らしい出来だった。ひょっとして、楽章を追うごとに、音楽が凝縮していくさまを示そうとしたのかしら。それは何とも言えない。ただ、個性的なモーツァルトであったことは間違いない。

東京時代と比べものにならないほど、コンサートの頻度が落ちた私、最近は何かと疲れることの多い日々を過ごしているが、どうもモーツァルトは私にとって癒し系ではないようだ。こういうときは、思いっきり暗い音楽が元気が出るかも。

なお、週末の両日、大阪市役所(中之島)の玄関ホールで行われるコンサートでもジュピター交響曲が演奏される。ただし、公募のみ各400名限り(@1000円)。私は当選したのだが、事情があり行けなくなってしまった。親密な空間で楽しめそうなコンサートだったのに…
 空席をつくりたくなかったので、チケット掲示板に出したところ、あっという間に引き取り手が出現、大植さんの人気も高まっているようす。ちなみに、週末のプログラムは以下のとおり。
 モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」
 バーンスタイン:「キャンディード」序曲
 チャイコフスキー:幻想序曲「ロミオとジュリエット」
 マスネ:「タイスの瞑想曲」
 ビゼー:「アルルの女」より「ファランドール」

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