イアン・ボストリッジ「美しい水車屋の娘」 ~ リートにも視覚
2004/3/19

最後までどうしようか迷ったコンサートだった。
 何度か、いずみホールに終演時刻を照会、結局、休憩無しで20:30には終わることが判明、聴き終えて東京に向かうのぞみ254号の中でPCに向かっている私。

正味一時間、20:10には演奏が終了、これはとっても短い。それというのもボストリッジ氏、登場するや、拍手も鳴りやまない間に、第1曲「さすらい」を歌い始める。ピアノのジュリアス・ドレイク氏と綿密に打ち合わせしているのだろう、ほとんどアタッカで続くようなところが何か所も。レイトカマーズを入れるための数曲終わったあとのポーズ、終盤の早口言葉の曲のあとでの水飲みのポーズを別にすれば、一気呵成に全20曲という感じだった。若い。

舞台に登場したボストリッジ氏の姿は特徴的だ。長身・痩躯、顔も長いから、体全体が縦に引っ張られたようなシルエット、テノール歌手としては異色かも。それに、けっこう動きがある。ピアノに手をかけて体を傾けるぐらいは当たり前、体を前屈して舞台床面に向かって声をぶつけるようにすることも。かと思えば、東海林太郎風に直立モードのことも。もちろん、曲想の変化、ドラマの進行にあわせたものだと思うし、動きの大きさの割には過剰感はない。ただ、音の飛んでくる角度が変わるので、響きの安定が微妙に損なわれてしまうのが気になる。

歌は、第5曲「仕事の終わった夕べには」あたりから、だんだん引き込まれていく。導入部が終わりドラマが展開するので当然だが、音色の変化も安定しだしたし、強い声の調子もよくなってきたし。

私はドイツ語は判らないが、この人の歌を聴いていると、角がとれ丸みを帯びたドイツ語の印象があります。子音が炸裂するよりは耳あたりがいいけど、あまりそれらしくない。イギリス人だからかしら。

わずか1時間のコンサートだが、配られた対訳冊子にして12ページ、言葉のボリュームは充分な量だ。1フレーズあたりの料金で行けば、リートというのはお得かな(逆に、歌手は大変だが)。

いずみホールでは、5月にはナタリー・シュトッツマンの「冬の旅」もあるようだ。どうしようかなあ。

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