新日本フィル定期「サロメ」 ~ へビーでもなく、ライトでもなく
2004/3/27

きのう「神々の黄昏」、きょう「サロメ」、ちょっとヘビーに過ぎる組合せかと我ながら思ったが、せっかくの上京の機会、オペラひとつじゃもったいない。そう、これはワーグナーのひと幕相当だもの。

ゼネラル・ディレクターにクリスティアン・アルミンクが就任してから、私は初めて聴く機会だ。「なかなか見栄えのする人だなあ」などと、外見にとらわれていてはいけないが、オーケストラの音は、このトリフォニーホールで聴いたなかで最上のものだった。この演奏を聴く限り、初台のピットに入っているNHK交響楽団よりも上だろう。

コンサート・オペラ形式と称する公演、若干の舞台が用意されている。オーケストラを舞台右側に寄せて、「C」というか、「亡」の字のように階段が二階のオルガンのところまで昇っている。オルガンの前あたりには直径2mぐらいの円筒、これは月を模したものでもあり、ヨカナーンの井戸でもあり、そんな象徴のようだ。

ただ、演出という点に関しては、ちょっと?という感じ。サロメとヘロディアスが色ものだが、男声陣は黒装束、マスクをつけたりするが普通の演奏会の衣装で、どうも中途半端。動きも舞台スペースの制約からか、ぎこちない。7つのヴェールの踊りに至っては、ヴェールは一つきり、その代わり(?)にマスクを取り替えるのも意味不明、曲がクライマックスに突入するところではサロメは舞台から姿を消してしまうという始末。何のことはない、衣装を取り替えて再登場するだけ。何だこりゃ。

主役陣は海外組で占められている。
 サロメのアンナ・カタリーナ・ベーンケは、スタイルも良くてなかなかの美形。なので、あの演出は余計に残念なところ。それはともかく、歌自体は、ありがちな叫びではなく、終始リリックななかに芯があって好感。ヘロデのウド・ホルドルフは、存在感が薄いと言うか、印象が弱い感じ。好色漢でもなければ、暴君でもない。オロオロするばかりの父親のよう。ヘロディアスにはアニヤ・シリヤという懐かしい名前が。ベルリン・ドイツ・オペラの来日公演のときのゼンタをテレビで観た記憶がある。あれは何十年前のことかな。でも、この役にはぴったりだ。そんなに衰えも感じない。ヨカナーンのユルゲン・リン、舞台裏と舞台上での声の違いが奇妙な感じ。深々とした預言者らしい声を期待したが、ちょっとイメージ違い。

歌手が悪い訳ではないが、端的に言えば、オーケストラが主役の公演だったと思う。そして、それを楽しむのが目的なら、もう充分すぎるほどの出来だった。
 いつもトリフォニーの終演後だと店が閉まってしまう錦糸町のエスニック料理。マチネだとその心配がなく、5時に一番乗りだった。食べ始めたら、隣の席に着いたのは井上さんではないか。懐に大阪国際フェスティバルの「ボエーム」のチケットを持っていたのに、サインもらいそびれた。

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