宝塚で歌劇を観る ~ ヘンデル「ロンバルディアの王、フラーヴィオ」
2004/5/23

先週、大阪には珍しく、私の興味をそそるコンサートが連日のように。でも、こういうときに限って、何かと予定が。ずっと、風邪気味で、体調もいまいちだったし。

18日、幸田浩子リサイタル(イシハラホール)
 19日、ナタリー・シュトゥッツマンの「冬の旅」(いずみホール)
 20日、阪哲朗/関西フィルの「英雄の生涯」(ザ・シンフォニーホール)
 21日、現田茂夫/大阪シンフォニカーのショスタコーヴィチ(同上)
 22日、ゲルギエフ/ロッテルダムのマーラー(京都コンサートホール)

単身赴任のころなら日参したかも知れないが、高額のものはないにしても財布の具合もあるし、カミサンの逆鱗に触れてはならじ。

そして、満を持して23日、日曜日。前売り3000円(当日3500円)。主催者から送られて来たチケットの封筒には、「フラーヴィオのこと、何でお知りになりましたでしょう?」との照会があった。
 そこは、「蛇の道は蛇」、地獄耳の友だちがいるとこうなりました。さらには、東京から遠征という方まで現れて。なんて回答をしたら、「奈良から、またお知り合いの方は東京からわざわざいらっしゃることを出演者に申し伝えます」との返事。おっと。

さて、会場は宝塚ベガホールという場所だ。かの雪・月・花・星・宙の大劇場は宝塚駅が近いが、ベガホールは宝塚の一つ手前、台所の神様、清荒神(きよしこうじん)駅の近く。

内海由美子(ロンバルディアの王、フラーヴィオ)
 神田裕史(王の重臣、ウゴーネ)
 野間直子(ウゴーネの息子、グイード)
 高内祥子(ウゴーネの娘、テオダータ)
 森孝裕(王の重臣、ロターリオ)
 田中希美(ロターリオの娘、エミーリア)
 津山和代(軍の副官、ヴィティージェ)
 大森地塩指揮、バロック・アンサンブルVOC

VOCとはVivava Opera Companyという団体で、今回が8回目の公演になるようだ。ヘンデルの日本初演に取り組むのは初めてのよう。

お話は、王様が家臣ウゴーネの娘テオダータに夢中になり、歓心を買うためか、邪魔を排除するためか、父親を抜擢人事で英国に。面白くないのはそのポストを狙っていたもう一人の家臣ロターリオ、ついには決闘騒ぎになって、ロターリオはウゴーネの息子のグイードに倒される。父親を殺されたエミーリアはグイードと結婚式を挙げたばかりなのに突然の悲劇。そして、もう一組のカップル、副官ヴィティージェとテオダータは王の横恋慕によって三角関係に。そんな絡みでドラマが進行し、最後は一応のハッピーエンドに近いかたち。

ヘンデルの作品中でもマイナーな位置づけのもののようですが、正真正銘の日本初演、原語上演なので、関係者の意欲も並々ならぬものがあったのだろう。どんな団体か、どの程度の水準か、さっぱり判らないままにチケットを申し込んだのだが、予期した以上の出来映え、はるばる奈良から宝塚まで足を運んだ甲斐があった。

癒し系のアンサンブルの響きだ。小編成、弦が2-2-1-1-1、チェンバロ、フルート、オーボエ2というもの。舞台上手に控えている。舞台は簡素なもので装置と言えるようなものはなし。背景にスライドを映写し場面の転換をしている。

出演者は皆さん好演だったと思う。日本初演ということもあってか、知られざる作品の再現ということに意を注いだような歌唱という見方もできるかな。良く準備されていたと思う。

歌の水準として、図抜けていたのが、ヴィティージェを歌った津山和代さん。作品の蘇演という域を超えて、ドラマに歌に血を通わせていたのは彼女だ。言葉の明瞭さシャープさがレチタティーヴォを生気溢れるものにしている。アリアも見事。テクニック面で不安がないから、彼女のアリアはドラマや心情を伝えるものになっている。明眸皓歯、所作や表情も自然で、活き活きとしたもの。ご近所の大劇場のトップスターと同様のオーラが彼女のヴィティージェにはある。もし、この作品が、世界のどこでも普通に舞台にかけられる演目だとしても、彼女なら通用するだろう。大阪にも、こんな人がいるんだ。

どうも、津山和代さんばかりに目と耳が行ってしまって、他の出演者には申し訳ないが、エミーリアの田中希美さんの後半の歌も出色かなと思う。全く初めて耳にする音楽、突っ込んだ論評は私にはちょっと無理。

このベガホール、駅に降りて踏切を渡ったら目の前。宝塚市の公共施設のようで、1階には図書館も併設されている。ホールの入口には金色のヨハン・シュトラウス像。ウィーンにあるのと同じ、レプリカのよう。聞けば、宝塚市はウィーン市第9区と姉妹都市らしい。

客席は372席とのことだが、行ってみれば、なんと後方や両サイドに補助席が、まさか満席とは思いもしなかった。知られざるバロックオペラの復活が今後もあるなら嬉しいことだ。

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