上海交響楽団@シンフォニーホール ~ 海の向こうは上海だけど
2004/10/4

ともだちが木曜の朝日新聞夕刊の切り抜きを持ってきてくれた(うちは産経新聞なもので)。
「これ、応募したで。当たったら一緒に行こか」
「へえ、私も応募しときまっさ。チケット売れそうもないし、きっと全員当選ちゃいまっか」

それが本日の上海交響楽団の演奏会、聴いたことのないチャイコフスキーのマンフレッド交響曲がメインのプログラム、アジア最古のオーケストラということだし、いまやリニアモーターカーさえ走っている先端都市の上海、それなりの水準の音楽を期待してもいいかな。

文化庁舞台芸術国際フェスティバルの一環でアジアオーケストラウイークという催しが東京のオペラシティ・タケミツメモリアルと大阪のシンフォニーホールで開催されている。そのトップバッターが上海交響楽団ということだ。立派なプログラムが配られている。相当の助成が行われているのだろう。当然、国税からの支出ではあるが、新国立劇場のプロダクションに比べれば可愛いものかも知れない。

で、肝心の演奏はと言うと…ハズレ。

中国人作曲家の作品(王西麟:ワン・シーリン「火把節」)、パガニーニの第1コンチェルト、そしてチャイコフスキーの彼の曲、これはどう見ても傑作とは言い難いラインアップだ。これらを演奏して感銘を与えるには、なまじのオーケストラ、指揮者の能力では無理だろう。その点では、果敢な選曲と言ってもいいのかも知れない。

初めて聴いても印象に残る曲、気に入る曲はあるものだ。でも、やはりこのチャイコフスキー、駄作と思わせる演奏でしかなかった。
 オーケストラは下手ということはない。ちょっと無造作な音の出し方だけど、さほど在阪のオーケストラに見劣りはしない。でも、音楽の流れがさっぱり感じられない。その場その場ではきちんと演奏しているのだろうが、指揮者(陳燮陽:チェンシェヤン)の構想力が不足しているのだろうか、賑やかで単調な音が繰り出されるなか、もうご勘弁という冗長さを感じるばかり。

楽章の切れ目で席を立ってもよかったが、それも遠来のオーケストラのメンバーには非礼だと思って思いとどまる(サッカーアジアカップが反面教師か…大阪は上海と姉妹都市でもある)。

パガニーニを演奏した黄蒙拉(ファン・モンラ)は先日の大阪フィル定期のソリストでも登場した人。そのときのシベリウスは途中から聴いたのだが、落ち着いた音色が記憶に残っている。やはり曲が変われば印象も変わる。パガニーニでは水際だったテクニックだ。オーケストラとの落差が顕著。オーケストラは14-10-10-11-10という大編成なのに、弦のボリューム感はない。まあ、しかし、ヴァイオリンがよほど好きでもないと、さっぱり興味が湧かない曲かと思う。

舞台に並んだメンバーは、昔の日本のオーケストラのよう。西洋人は二人ほど、黒い髪の人たちがずらっと揃うのは珍しい光景だ。西欧クラシック音楽文化から遠く、同じアジアにあっても、日本と中国はずいぶんと違うなあ。直線距離にすれば、大阪からだと札幌とはほとんど等距離なのに、上海は遠いと感じた。

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