井上道義/大阪フィル定期/ドボルザークほか ~ 傑作はやはり傑作
2004/10/29

指揮者変更のお知らせが直前に届いた。ウラディーミル・フェドセーエフ氏の急病、来日中止で、井上道義氏に。曲目の変更は、なし。

シチェドリン(ビゼー原曲)/舞踊音楽「カルメン組曲」(抜粋)
 ショパン/ピアノ協奏曲第2番ヘ短調作品21
 ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調作品88

突然のピンチヒッターで、よく井上氏のスケジュールが空いていたものだ。さすがに、指揮台にはスコアがのっかっていたが、一度もめくらないのですから、あれはお守りみたいなものか。

プログラム真ん中の演目、小山実稚恵さんのピアノはくっきりとした音、粒だった音という感じで、とても耳に心地よい。曲自体には全く興味が持てないのだけど、ときどき意識を失いながらもピアノの美しさは判る。どうもいい加減な聴き方だが、ウィークデーの定期演奏会ではコンチェルトで夢うつつということが多い私。

シチェドリンの曲は面白い。オーケストラに管楽器がないのに先ずびっくり。そのぶん打楽器はいっぱい。誰でも知っている原曲だけに、楽器編成から変えないとオリジナリティが発揮できないという作戦か。なかなか賢い。

鐘の音がピアニシモでメロディを奏でる。印象的な開始だ。あとはお馴染みのテーマが続くが、管楽器がないため、根本的にサウンドが違うので新鮮。途中、「アルルの女」の「ファランドール」も挿入される。あれれ。今回は「抜粋」なので、「全曲」だとホセやミカエラのアリアなども登場するのかな。どんなアレンジなのか聴いてみたい気がする。フィナーレの闘牛場のシーンは、ホセとカルメンの絡みの舞台を彷彿とさせる。強烈な打楽器の音でカルメンの死。ヴィオラ4本で分奏するエンディングがとても印象的。
 この舞踊音楽「カルメン組曲」、今年、大阪センチュリー交響楽団でも採り上げた曲だ。人気が出て来ているのかなあ。

ドボルザークは没後100年ということで、あちこちでプログラムを賑わしているが、オーケストラ作品ではやはり、これだなあ。交響曲第8番、大傑作だ。
 全曲を通してメロディが美しく、ドボルザーク特有の強弱緩急の波動が快い。とても久しぶりに聴いたが、汀の波や、頂を渡る風の息を、私はこの曲に感じる。演奏も過剰な表情を押さえ、自然だ。

井上/大阪フィルのコンビは、これまで何度も共演しているだけに、急場の代役という域を超えて、しっくりとした音楽づくりだ。井上氏は、意欲先行で、ときに演奏がついて行かないことがあり、結果、出来不出来のある指揮者かなと思うが、今回は代演がプラスに作用したのかも。

余談になるが、大阪フィルの東京定期が久々に開催されるようだ。就任以来、大阪に腰を据えて東京には行かないと言っていた大植英次監督ですが、2年目シーズン最後のプログラムを携えて東都の聴衆に問うようだ。木曜・金曜が地元シンフォニーホールでの定期で、3月20日の日曜にサントリーホールという日程。演目はマーラーの交響曲第6番、今度は首都圏の方の感想も聞けそうで楽しみだ。

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