大阪音楽大学カレッジオペラハウスの「ヴォツェック」 ~ 謎の2階2列
2004/11/7

一昨年の「トゥーランドット」(ブゾーニ)以来のカレッジオペラハウス。午前中、車で大阪市内に出る用事があって、そのまま豊中に向かう。この夏、行き損ねたサイトウキネン、「松本の仇を、豊中で」

阪急庄内駅の東側、国道176号線沿いに市営の駐車場があることを住宅地図で事前にチェック、20分間100円なのでまあまあ安い。オペラハウスまでは線路を潜って10分もかからない。石を投げたら当たりそうな高度で大阪空港に着陸するジェット機が頭上を通過することも、隣が文化住宅というのも変わらない眺めでだ。でも、西隣の道は拡幅されたようだ。

かなり前、夕刊の文化欄でこの公演の練習風景などが記事になっていた。それだけ練習を積んできたのだと思う。それを感じさせる演奏、オーケストラも、歌手の皆さんも。途中に一度休憩を入れても2時間、決して長くはないが、これをぶっ続けでやられたら私には辛いので休憩は助かる。

短い場面の転換、その間に挟まれる密度の高い間奏、ほとんど芝居に近いような台詞の多さ、歌うようなしゃべるような歌唱、物語は暗くて救いのないものなので、聴いていて疲れるオペラだ。いわゆるカタルシスというものはないに等しい。

山下一史指揮のザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団は、最初は手探り状態の感もあったが、徐々に乗ってきた感じ。響きが鋭角的なところが多く、耳に刺激がきつすぎるのだが、さりとて繊細なところも兼ね備えています。ちょうど1年前、「ルル」での東京フィルよりも、いい出来かも知れない。この公演に賭けた意気込みのようなものが伝わってくる。

個々の歌を論評するほど、私はこの作品に親しんでいる訳ではないが、タイトル・ロールの井原秀人さんは期待どおりの素晴らしさ。マリー役の田中友輝子さんは熱演なのだが、あまりに叫びすぎのような。他のキャストでは大尉役の西垣俊朗さんが印象に残った。

栗山昌良演出の舞台は過度な抽象に走らず、シンプルでいながら貧相でもない。転換も小さめのパネルを降ろしている間に暗転、舞台を左右にスライドさせてスムースだ。

私の座った2階第2列中央という席は、音響的にはA席(S席の設定はなし)、ところがホール座席表にはこの列は表示されていない。悪名高い新国立劇場の手摺りと同じ理由で、この劇場では一般売りはしていない。「ここでいいから、お願い」と言えば、安く売ってもらえるようだ。

あと、どこから登るのかよく判らない、これも座席表にない謎の3階ガレリアがある。1・2階ともほぼ満席で、今日も3階に人影があったが、どうも学生の立見限定のようだ。

休憩時間に男子トイレのほうに列ができるのは、さすが音楽大学附属の施設、喫煙コーナーも屋外にわずかなスペースのみ。そのおかげで、またもや若杉弘さんに遭遇、ヘビースモーカーのよしみ、先日のびわ湖ホールの公演のことなど、いろいろお話しする。今後のプロデュースオペラでは、「スティッフェーリオ」「海賊」「レニャーノの戦い」とう順に日本初演するとのことで、楽しみ。

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