阪哲朗/大阪フィル定期 ~ これがひとつの壁なのか
2005/2/17

定期会員なのでよほどのことがない限り聴きに行くし、最近の大阪フィルの一皮剥けた演奏を聴くのが楽しみなのだが、今夜はダメだった。

阪哲朗さんは新進指揮者として華々しく登場しましたが、最近は酷評されることも目につく。私の場合、豊中での珍しいオペラ(ブゾーニの「トゥーランドット」)を聴いた限りでは、なかなかいい指揮者かなと思っていましたが、今回のシンフォニーにはちょっとがっかりだ。

シャブリエ/歌劇「グヴァンドリーヌ」序曲
 サン=サーンス/チェロ協奏曲第1番イ短調作品33
    アリソン・エルドリッジ(Vc)
 フランク/交響曲ニ短調

上記プログラム、どれひとつとして満足でなかった。どこがいけないんだろう。いろいろ考えながら聴いていた。
 まず、客演の連続で、限られた練習時間で、指揮者の意思を浸透させるのは大変な困難を伴うことが挙げられるだろう(大阪フィルには初客演)。
 または、楽曲に対するアプローチの仕方に問題があるのかも知れない。各パート、各フレーズを克明に振ろうとすればするほど音楽の流れがギクシャクとして、自然さが感じられなくなる。聴いていて落ち着かない。居心地の悪さを感じるばかり。

冒頭の序曲で感じたバラバラ感覚、不揃いというのではないのに、音楽のまとまりが感じられない。交響曲では曲想の移り変わりのスムースさがなく、聴いていてとても疲れる。そもそもプログラム自体、よほどの腕前でないと、サマになる曲ではないからかも知れない。フランクを得意として、これまで何度か手がけているはずなのに。

アリソン・エルドリッジというチェリスト、楽器の問題なのか、本人の技術の問題なのか、音が美しくない。コンチェルトの出だしの割れたような音に、"えっ"とびっくりしてしまった。もう、それで、聴く方としても集中できず。帰りの大阪環状線の電車にチェロを抱えた女学生が二人、楽器のハードケースには今日のソリストのサイン。思わず、「どうでした」と聞いてみたい誘惑に駆られたが、ヘンな中年オヤジが声をかけたら逃げ出すかも知れないし、まして感想など述べようものなら張り倒されるかも知れないと思い、自重してしまった。

コンサートの途中、オーケストラのゲネラルパウセに合わせたように、一度は大きなくしゃみ、もう一度は携帯呼び出し音、あまりにも見事なタイミング、いかな名手でもあそこまでぴたっと決められないと妙なところに感心してしまうほど、散漫なコンサートだった。

阪さん、才能ある人だと思うが、ここにきて壁にぶつかっているのかも。次に客演するときには面目一新の指揮ぶりを見せてほしいものだ。

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