東京のオペラの森「エレクトラ」 ~ 変化(進化)しないという才能
2005/3/13

年に2回、松本と東京で、海外から豪華キャストを呼んでオペラを上演する。しかし、何故か、オーケストラは臨時編成というパターン。指揮者の顔なじみの奏者が多いのだろうし、上手な人が沢山入っているのだろう、今回のメンバーリストを見ても、知った名前が何人も並んでいる。そうだ、アマチュアのオーケストラで上演するオペラのプロジェクトもあるから、この人は年に3回、日本で同じようなことをしている。

私はサイトウキネンも音楽塾も聴いたことがないので比較は出来ないが、今日の演奏を聴く限り、きちんとしたオーケストラを使ったオペラを日本でもやってほしいと思う。このオーケストラには不満が一杯だ。こんな作品をやるんだったら、なおのこと。来年は「オテロ」、次は「タンホイザー」というから、なおさらだ。

オーケストラはただやかましいと感じるだけ、全く音がブレンドされずに鳴り響いているように感じる。バランスを整えるということは、いかに有能な指揮者でも寄せ集めオーケストラ、かつ短期間では限界があるのでは。今回、どれだけの時間をかけたのか、私は知らないが…

しばらく前からオークションでは素人ダフ屋(?)の投げ売りも目立ったが、チケットの法外な値段にも拘わらず客席はほほ満員だ。終演後は熱狂的な歓声、支持者がこれだけいるんだったら、それはそれで結構なこと。
 いつも思うのだが、小澤ファンと根っからのオペラファンの層は、重なる部分が極めて小さいような気がする。注目のキャストを集めての公演だけに、無視はできないけど、聴いたあとではボロクソに貶すというのがオペラファンの通例。どうも、私もそっちの部類かなあ。端からそのつもりで聴きに行くんじゃないのだけど。

「エレクトラ」は1987年の暮れに、同じ小澤征爾指揮の演奏会形式で聴いたことがある。手兵のボストン交響楽団、会場はNYのカーネギーホール、タイトルロールはヒルデガルド・ベーレンスだった。
 ずいぶん遠い記憶ですが、音楽としては今日の演奏と大きな違いはないように思う。と言うか、ほとんど同じ。これは、皮肉じゃなく、偉大な才能かも。20年前と変わらない、進化しないと言うと語弊があるので、変化しないという才能!
 違いは、あのときは常設のオーケストラが演奏していたということ。やや過剰なダイナミクスなのに、それでも一定の節度の中に収まり、逸脱を感じなかったのに、今日のオーケストラは粗さがとても耳障り。ただ、限られた時間でやっていることだろうから、最終日に聴けば全く違うかも。

名だたる歌劇場の音楽監督という肩書きがあるのだし、それを目一杯活用して、オペラのパトロンを増やし、オペラファンも増やして、小澤という名前が消えた後も、日本で優れたオペラ公演がを続くような形で次代にバトンタッチしてほしいものだ。

エレクトラと母親クリテムネストラのデュエットの前までは、オーケストラの不満ばかりで苦痛だった。なお、歌い手ではクリテムネストラのアグネス・バルツァと、オレストのフランツ・グルントヘーバーが印象に残った。

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