アンナ・ネトレプコ@びわ湖ホール ~ ネイティブの強さか?
2005/4/24

どうして大ホールなんだろうと、いぶかしく思っていたが、予想どおり中ホールでも充分に収容可能な入りたった。オーケストラ席は7割程度埋まっていたが、階上はかなり淋しい状態。

アンナ・ネトレプコ、関西での知名度は低いし、このプログラムなので広範な動員は期待できない。GWのテアトロ・フェニーチェびわ湖公演はほぼ完売だが、東京からもファンが押しかけるオペラと違って、これはリサイタルだし…

モーツァルト
  「イドメネオ」~「いつ果てるのでしょう…お父様、お兄様、さようなら」
 リヒャルト・シュトラウス
  「8つの歌」作品10-1「献呈」
  「6つの歌」作品17-2「セレナード」
  「5つの歌」作品41-1「子守歌」
  「8つの歌」作品10-3「夜」
  「4つの歌」作品27-4「朝」
  「4つの歌」作品27-2「チェチーリェ」
 グノー
  「ファウスト」~「宝石の歌」
         * * *
 ドボルザーク
  「ルサルカ」~「白銀の月」
 ラフマニノフ
  「15の歌」作品26-10「私の窓辺に」
  「12の歌」作品21-4「彼女たちは答えた」
  「6つの歌」作品8-4「私は悲しみのために恋をした」
  「6つの歌」作品8-5「夢」
  「6つの歌」作品4-4「乙女よ、私のために歌わないで」
ラフマニノフ
  「12の歌」作品21-5「リラの花」
  「12の歌」作品21-7「ここはすばらしいところ」
  「6つの歌」作品38-5「夢」
  「14の歌」作品34-13「不協和音」
         * * *
プッチーニ
  「ボエーム」~「ムゼッタのワルツ」
  「ジャンニ・スキッキ」~「わたしのお父さん」
ドニゼッティ
  「ルチア」~「あたりは沈黙に閉ざされ」…カバレッタのみ

前半、後半、アンコールと、色分けが鮮明だ。
 白眉は何と言ってもラフマニノフ。正直なところ、それまでのプログラムはどうもピンとこない感だった。私の好きなタイプの声ではないが美声だし、歌のフォームもきっちりとしている人だ。でも、なんだか行儀よすぎるような、枠の中からはみ出さないと言うか、安全運転と言うか。そんな印象が否めなかった。

ラフマニノフになって、俄然スケールアップした感じ。私には馴染みのない歌ばかりだったが、表現の振幅がそれまでと比較にならないのはすぐ判る。オペラのアリアのようにドラマを感じさせる歌が聴かれた。紗幕の向こうで演じられていたものが、それが取り払われたみたいと言えばいいかなあ。

イタリア、ドイツ、フランス、チェコときて、ラフマニノフになって、ようやくロシア語。そのせいなのかしら。母国語の力、安心感というものが、このレベルの歌手にしてもあるのだろうか。けっして語学に明るいわけではないが、耳に届く音からそう感じてしまう。

びわ湖ホールのピットの部分が、完全にせり上がっているので舞台床は真っ黒、オペラの舞台は移動式の壁の後ろに隠れてしまっているので、これがコンサートホールモードなんだろう。最初、オペラのときよりも響き過ぎなのか、言葉の輪郭がぼーっとした感じがした。でもラフマニノフではそんなことはなかったので、やはり…

アンコールはみんなが知っている曲が続き大喝采だったが、ちょっと違和感もあった。ムゼッタにしてもラウレッタにしても、彼女が演じたら本当に舞台映えがするし、このリサイタルでの仕草や表情も絵になるものだ。姿かたちは完璧なのに、残念ながら、声の質がこの役とは違う。そんなことを言っても詮方ないのだが、その歌だけをみるのではなく、オペラの中のキャラクターとしてみると、やはり違うと思う。そんな聴き方をしないほうが幸せだけど。

それと、イタリア語の歌で、"v"の音が甘いのが気になった。ラウレッタでは、…ci voglio andare…、Ponte Vecchio、vorrei morir…と大事な部分にこの音があるのだ。

今日は聴けなかったが、彼女、2006年のメトロポリタン歌劇場来日公演で、ドンナ・アンナを歌う。何が一番と言って、まさにこの役にぴったりの声だと思う。やや硬質できっちりとしたシェイプの…

そして、マグダレナ・コジェナーも同じ舞台に立つようなので、これはドン・ジョヴァンニならずとも目移りしてしまいそうだ。西宮球場(兼競輪場)跡に出来たオペラハウスに行ってみよう。

そう、今日のネトレプコ、前半はきれいなピンクのドレス、後半は赤・黒・白の大きな花柄のドレス、胸の切り込みがとても深い。あれあれ。さすがに、公演後のサイン会(客席の入りからすると信じられないほどの長蛇の列)では、地味なブラウンのワンピースだった。
 快晴、ホワイエから望む眼下の琵琶湖、対岸の比良の山々を背にした美人ソプラノを間近で見ようとする野次馬(私もその一人)が多かったこと。
 なお、ピアノ伴奏のマルコム・マルティノーはなかなか達者だった。

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