井上道義/大阪フィル定期 ~ 借りを返す会心のラヴェル
2005/5/19

先月末の大植さんによる「マ・メール・ロア」が、まるで今月の定期の予告編のようだった。本編は予告編以上!

昨年のフェドセーエフ来日中止で井上さんは急遽代役に。このときは少し高めの価格だった一回券の差額払い戻しという、見ようによっては屈辱的な措置がとられた。そして年が替わって超閑散の大阪フィル京都公演。貧乏くじを二つ引いた後の大当たりではないかな。これで大阪フィルも井上さんに借りをだいぶ返したかも知れない。

今日はオール・ラヴェル・プロ。
  スペイン狂詩曲
  左手のためのピアノ協奏曲ニ長調(独奏:菊池洋子)
  組曲「クープランの墓」
  亡き王女のためのパヴァーヌ
  「ダフニスとクロエ」第2組曲

このプログラム、ひと昔前の大阪フィルだったら、響きは重くって、流れは滞りがち、聴く前から気が滅入りそうで、チケットを買う気にはなれなかっただろう。でも、今は違う。

井上さんは"上り坂コンサート"というのを首都圏でやっていたと思うが、今日の演奏は、まさに上り坂のオーケストラの演奏、井上さんにとっても会心の公演だったのではないかな。

コンチェルトの菊池洋子さんを含め、オーケストラのソリストの技倆が安定しているし、各パートのバランスや受け渡しも安心して聴いておれるようになった。ただただ、ラヴェルのオーケストレーションの妙を楽しめる。

どれも高水準の演奏で穴がなかったが、ひとつ選ぶなら、私は「クープランの墓」、まるでオーボエ協奏曲のような作品かとも思うが、後半のプログラムでトップを吹いた加瀬孝宏さんの音色の素晴らしかったこと。見事な弱音と軽やかなパッセージ、かねてから私の注目の人、いいプレイヤーだ。

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