ドレスデン歌劇場室内管弦楽団&森麻季 ~ たまにはいいことも
2005/6/3

「今夜の森麻季さんもお気に入りなので聴きたいところですが、このところ、ヴェネツィア、ナポリと、来日オペラで手元不如意のため‥」とか言っていたら、何という僥倖、夕方に電話があり、いずみホールの招待券をいただけることに。
 まだ、ナポリの「トロヴァトーレ」が未入手というタイミングなので、干天の慈雨(変なたとえ)とはこのこと。
 私はチラシの森麻季さんの名前しか目に入りらなかったのだが、ドレスデン歌劇場室内管弦楽団というのは、あのオペラハウスの名高いオーケストラのメンバーのようだ。

まあ、動機の如何は問わず、結果よければ全てよし。つい本当のこと(自分の感じたまま)を書いてしまう性分なので、招待券いただいて辛口コメントなんてことになると申し訳ないし…

モーツァルト:セレナード「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」ト長調K525
 ヘンデル:歌劇「セルセ」より「オンブラ・マイ・フ」
 バッハ:カンタータ第199番「わが心は血の海に漂う」より第3曲・第4曲
 モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、汝、幸いなる魂よ」
    * * *
 モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K364
    * * *
 ハイドン:交響曲第45番ヘ短調「告別」より第4楽章
 ハイドン:交響曲第49番ヘ短調「受難」より第4楽章
 J.シュトラウス:「ピツィカート・ポルカ」
  森麻季(ソプラノ)
  ヘルムート・ブラニー(指揮)/ドレスデン歌劇場室内管弦楽団

剛毅な演奏だった。最初のセレナードの冒頭の「ぐわん」という音でびっくり。強い音、厳しい音で、モーツァルトの繊細さや優美さとは、かなり距離のある音楽だ。500円のプログラムも買わなかったので、コンサート・ミストレスの名前は判らないが、この人の音だ。音の大きさは他のヴァイオリンの二倍ぐらいあるんじゃないだろうか。ガンガンとオーケストラをリードしていく。恐るべし。

弦は5-4-3-2-1だったようで、オーケストラ全体では決して硬い音にはならないのだが、トップの音が異色。全体としては柔らかい響きでありながら硬質な演奏とでも言える。

このアンサンブルと森麻季さんの声が果たしてどのようにブレンドされるか、セレナードに続く声入りの曲は興味津々。低めの音もあって、ちょっときついかなと思う部分もあるが、相変わらずの美声だ。この人の美点は、声質のピュアさに加えて、暖かみがあること。歌い手は一に声、二に声、生来の声自体に魅力がなければ、技術がどうのこうのなんて。

ヘンデルも悪くはなかったが、まあまあという感じ。普段私には馴染みのない長大なバッハの曲がよかった。この人の声で聴くと、非宗教的な人間の私でも、神の恩寵というものがあるかも知れないと思ってしまう。

声のバックに回ったオーケストラの表情は穏やかな響きだが、決して甘くはならないのは最初のプログラムと同様だ。これがドレスデンの響きだろうか。森麻季さんの声と変にブレンドしないところが、かえって、いい。

休憩後のK364の協奏交響曲、こんな凄い曲だとは、これまで思いもしなかった。まさに堂々たるシンフォニーだ。ソロに回ったコンサート・ミストレスはグイグイと切り込んでいく。男性的。相方の女性的なヴィオラを受け持つのが男性ソリストというのも対比の妙。もっと典雅な曲だと思っていたが、とんでもない誤解、まるでベートーヴェンのよう。

本プログラムは神妙な顔で演奏していたメンバーたちも、アンコールになってリラックスしたようだ。告別で一人二人と舞台から去って、これでおしまいかと思ったら、戻ってきてさらに二曲。クソ真面目にやるので、そこがまたユーモラスでもある。いいコンサートだった。

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system