若杉弘/東京都響@びわ湖ホール ~ マーラーもルーチンの時代か
2005/9/4

東京出張の帰りに横浜で寄り道、京都に着いても大津に引き返してびわ湖ホールへ。カミサンがこわいなあ。

この大ホールで、オペラじゃなくてオーケストラのコンサートがあるのは珍しいこと。私はこのコンビでのR.シュトラウス大特集(歌付き)以来だ。あれは、ホールの開場の頃なので、もうずいぶん前のこと。

若杉さんのマーラーは東京都響と取り組む時期より前、京都市響で継続的に採り上げていた頃に通った記憶がある。まだ、京都コンサートホールなんて影も形もない頃、古びた京都会館での演奏会だった。あのころ、ぼちぼちブームの兆しはあったが、マーラーの交響曲を採り上げること自体がオーケストラにとってもチャレンジだったし、聴く側の私たちも普段と違う気持ちで会場に向かったような気がする。

東京都響にしても若杉さんの下でのマーラーのあとは、前音楽監督の故ベルティーニ氏が何度も採り上げて、自家薬籠中のものになったレパートリーだろう。ましてや、定番中の定番、第5交響曲だし…

ところが、あに図らんや、演奏の感銘度は今ひとつだった。決して悪い演奏じゃないとは思うのだが、第2・第3楽章あたりはだれてしまった感じ。丁寧に音を積み重ねて連ねて行く若杉/東京都響だが、あまりエキサイティングじゃない。退屈してしまう場面も多々…

自分の東都での遊び疲れのせいもあるかなと思ったが、どうもそうでもなさそう。眦を決した定期演奏会の演目だったものが、今や名曲コンサートのプログラムになってしまった。そんな感じかな。それだけオーケストラのレベルが上がっているということだし、たぶん京都会館で聴いた頃とは比較にならないのだと思う。でも、その反面でオーケストラにも聴衆にも失われたものがあるような気がしてならない。

東京でしばしば聴いていた頃の都響とは顔ぶれもだいぶ替わっている感じだ。見覚えのある顔が少なくなった。

私は、マーラーよりも最初に演奏されたモーツァルトのフルート協奏曲第1番のほうに好感を持った。ソロは高木綾子さん。オペラハウスならではの黒い床の舞台に並んだ少人数のオーケストラ、登場した高木さんのブルーのドレスの色が深くて輝かしくて。ヴェセリーナ・カサロヴァに似た容貌、フルートを持っていなければ歌い出すのかと思うほどだ。

ここのホールの響きはいい。しっとりと落ち着きがあり、弦の音は豊かで、大音響のブラスも耳に優しい。コンサート専用ホールを凌ぐのではないだろうか。オペラ上演が少ないのは残念だが、コンサートがもっとあってもいい。

なお、この日曜日、お隣の京都では西本智実指揮の京都市響によるコンサートがあり、渡邊玲奈ソロによるジョリヴェのフルート協奏曲第1番、モーツァルトのフルート協奏曲第2番、それにベートーヴェンの交響曲第7番という演奏会が同時刻に開催されていた。こちらの料金は2000~1500円ということなので、狭いマーケットだからお客が流れてしまったのか、折角の音楽監督によるびわ湖ホールのオーケストラ演奏会の入りは淋しいものがあった。

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