オッコ・カム/大阪センチュリー ~ 指揮台のクライバーンかと思ったが
2005/10/7

オッコ・カム、フィンランド人指揮者、ずいぶん昔に名前を知った人だが、まだそんな歳でもないんだ。1946年生まれらしいので60になっていない。1969年カラヤン国際指揮者コンクール優勝、その直後にドイツ・グラモフォンからレコードがリリースされ、日本でも盛んに宣伝されたことを覚えている。
 若くして華々しいデビュー、そして、その後は名前を聞くことも少なくなる。なんだか、第1回チャイコフスキーコンクール優勝のヴァン・クライバーンを連想してしまう。
 その人が大阪センチュリー交響楽団の定期演奏会(ザ・シンフォニーホール)に登場、故国のシベリウスとショスタコーヴィチを演奏した。

シベリウス:劇音楽「クオレマ」より「鶴のいる情景」
 シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調(松山冴花vn)
 ショスタコーヴィチ:交響曲第1番

録音も実演も聴いたことがないのに、上記のような先入観があり、あまり期待もせずに1000円のチケットで出かけたが、これが、なかなか、いい。とってもお得なコンサートだった。

大阪センチュリー交響楽団は高関健さんの頃に、大阪フィルにそっぽを向いて足繁く通っていた。そのときからアンサンブルの良さを評価していたが、その美点は健在のようだ。反面で、音が薄い印象もある。でも、今夜の演奏はオーケストラの特質がいいほうに作用していたように思う。

たぶん、オッコ・カムの指揮に負うところが大きいのだと思う。輪郭のはっきりした響き、個々のパートの分離とともに音の立体感がある。強弱のニュアンスも好ましい。ショスタコーヴィチのパッチワークのようなシンフォニーなのに、バラバラな感じがない。次々と現れる楽想を存分に楽しませてくれる。

これは、ひょっとして、60過ぎて大変な指揮者になる人かも知れない。私が知らないだけで、派手なデビューのあとは地道にキャリアを積み重ねてきたのかも知れない。

前半のシベリウスの2曲、興味深かったのは短い作品「鶴のいる情景」を協奏曲の序奏のように位置づけて演奏したこと。曲が終わると拍手が出る前にソリストの松山冴花さんが入場、すぐにヴァイオリン協奏曲に続くという趣向。同じ作曲家、作曲時期も近接、違和感はなく自然だった。

アメリカで活躍中らしい松山冴花さん、胸元で悩殺するドレスとは裏腹に、演奏自体はしっかりとしていて清楚な感がある。先入観もそうだが、見かけで判断しちゃいけない。

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