バイエルン州立歌劇場「アリオダンテ」 ~ 内容と価格は反比例?
2005/10/9

二度の休憩を除いて正味3時間弱、ヘンデルのオペラは長い。時間だけなら、もっと長いオペラは沢山あるが、アリアの連続、しかも、それぞれが繰り返し付き、その間にドラマは停止しているので、歌唱だけが命、のはず。

そんなことで、退屈させないために、歌以外の工夫をいろいろと施すのだろう。床や半透明の幕にアクリル板(たぶん)を多用した、華やかな舞台装置。天蓋を下に降ろして屋根上のシーンを出現させたり、夢のシーンではアクリルのプールが突然登場、おまけにヌードになったダンサーが飛び込むという大サービス。随所に背景で登場するバレエにも目が引きつけられる。

そして、床に物をたたきつけるシーンが何度も。当然のことながら、大きな衝撃音が場内に響くから、目覚まし効果は抜群。演出に装置に、知恵を絞らないことには、普通の歌手たちでは、この長丁場のオペラを支えきれないし、お客は退屈しきってしまう。

その昔は、名歌手が登場したときに、その妙技に喝采、あとは適当に、という鑑賞スタイルだったのだろう。でも、現代の我々は、飲み食いなし、おしゃべりなし、暗くて狭い客席で身じろぎもせず舞台に釘付け、これじゃよほどの名歌手を揃えない限り、かなり辛いことになる。

指揮:アイヴォー・ボルトン
 演出:デヴィッド・オールデン
 舞台美術:イアン・マクニール
 衣装:イアン・マクニール
 振付:マイケル・キーガン=ドラン
 スコットランド王:ウンベルト・キウンモ
 ジネヴラ:ジョーン・ロジャーズ
 アリオダンテ:アン・マレイ
 ルルカーニオ:ポール・ナイロン
 ポリネッソ:クリストファー・ロブソン
 ダリンダ:オルガ・パシチュニク
 オドアルド:ケネス・ロベルソン

このキャストの中で声楽的な満足を得られたのは、女官ダリンダ役を歌ったオルガ・パシチュニクだけかなあ。この役は、王女ジネヴラをめぐって、アリオダンテの恋敵ポリネッソの奸計に嵌められるという役回りですが、ドラマとしてはご都合主義でアホらしさを感じるばかりの中で、唯一、歌の中にドラマを内包できていた人だと思う。

ポリネッソ役のカウンターテナーのクリストファー・ロブソンはご勘弁いただきたいような音色で、気色悪いことこの上ない状態だった。先日聴いたマックス・エマニュエル・ツェンチッチには圧倒されたのに、これも同じカウンターテナーだなんて…。往時のカストラートは知る由もないが、ヘンデルは本来どんな声のために曲を書いていたんだろう。知りたくなる。

なんだかんだと言いながら、歌手はそれぞれに頑張っていたと思う。でも、感銘するほどの歌でもなかったと思うし、少なくとも5階のサイドバルコニーまで届くほどのオーラはなかった。

9月の伊丹(アルチーナ)と神戸(アンドロメダ・リベラータ)では、バロックオペラを大変楽しめたのに、大枚払って東京まで出てきて、この程度かという感じだ。予習をしない私が悪いのかも知れないが、でも関西の2公演だって何の準備もしていなかったし…

今回の会場は東京文化会館、NHKホールに比べれば遙かにマシな劇場だが、やはりバロックオペラには不適ということが原因かなあ。そう言えば関西の2公演は500人規模のホールだった。次回、横浜遠征予定の「バヤゼット」では、こんなことはないと信じている。

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