大友直人/京都市交響楽団定期 ~ やっぱり常任指揮者
2005/11/18

コンサート夏枯れの時期に開催される8月定期演奏会、それと秋のびわ湖ホールのヴェルディ、私が京都市交響楽団の演奏を聴くのはそれぐらいだ。京都北山のコンサートホールは遠い。たぶん大阪からの客は数少ないのでは。

したがって、このオーケストラの常任である大友直人さんの指揮で聴くのは私は初めてだし、東京でも聴いたことがない。内外を問わず指揮者には多い短躯のイメージを顔写真から抱いていたが、この人は長身だ。ソリストの一人クリストフ・プレガルディエンと並んでも引けをとらない。意外。

まあ、そんなことはどうでもいいとして、やはりオーケストラは常任指揮者の演奏を聴かないと判断できないという当たり前の事実に思い至ったコンサートだった。

シューベルト:交響曲第7番ロ短調「未完成」D.759
 マーラー:交響曲「大地の歌」
     (独唱)白井光子、クリストフ・プレガルディエン

両曲とも大友さんはタクトなし。いつもそうなのかどうか定かではないが、その音楽はしなやかだ。各楽器のバランスもとてもいい。概して音が痩せた感じのすることが多い京都市交響楽団なのだが、この日はそんなことはない。どちらの曲も過剰なメリハリを付けたりせず、自然にきれいに歌う。常任指揮者としてオーケストラを掌握した人でなければ出せない音という感じ。うーん、この人、なかなかいい。

ソロ奏者がこんなに上手だったのか、「未完成」もさることながら、「大地の歌」では破綻を来すのではないかと思っていたのに、いやあお見事。しかも大友さんのコントロールが立派。「大地の歌」の最終楽章「告別」の終わりのチェレスタやマンドリンのぽっんと弾く一音まで、長大な音楽の一部をなしているのはあまりないことだ。少なくとも私にとっては、このオーケストラで聴いたベストのコンサートだ。

両歌手には問題もあるが、それも交響曲として聴くなら許容できる範囲かな。
 テノールというよりバリトンではないかと思うような音色のクリストフ・プレガルディエン氏、高音はファルセット気味で、オーケストラの上を抜けて来るような声ではない。この曲を大きなホールで聴くにはちょっとね。それに比べれば、白井光子女史は格の違いを感じたが、この人にとっても、これは限界の作品だろう。第2楽章「秋に淋しきもの」や「告別」の滋味は素晴らしいものがあるものの、第4楽章「美について」では後半部分ではオーケストラに埋没してしまい、何を言っているのか全く聞こえない。大友さんは慎重にオーケストラの手綱をひくものの、それにも限度があるし、一定以上の声のパワーがないとオーケストラをバックに歌うことは疑問だ。この人は小さなホールでピアノ伴奏で歌う人なんだろう。マーラーのこの作品は人気もあるし、出演依頼も多いと思われるが、白井さんの本領は別のところにありそう。

声楽の観点では最高とは言い難いものがあったが、オーケストラの充実度ではなかなかのもの。大友さんは京都でいい仕事をしているようだ。ということで、帰りに大友さんの次回定期公演のチケットを買ってしまった。12/2(金)「スコットランド」と「ドン・キホーテ」

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system