大友直人/京都市響定期 ~ 自然体の名演
2005/12/2

ウィークデーに大阪から京都のコンサートに出かけるのは、相当気合いを入れないと挫けてしまう。逆に、行くからには一発必中のつもりでチケットを買わないと、つまらなかった日には帰りが長い。地下鉄があるとはいえ、コンサートホールは北山だ。

地下鉄組がほとんどだが、なかにはチャリンコに乗ってコンサートホールに来ている学生さんもいる。京都らしい。ただ、6割程度の入りというのは、もったいない。

メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調「スコットランド」op.56
 R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」op.35
 独奏:堤剛(チェロ)、川本嘉子(ヴィオラ)

前回の定期演奏会(「未完成」・「大地の歌」)を聴いて、大友さんの音楽づくりに好感を持ったので、その帰りに買ったのが今回のチケット。結果、アタリ、だった。前回を凌ぐ出来映えです。このコンビ、今まで聴いていなかったのが悔やまれる。

一番いいところは、音楽の流れがいつも自然なこと。ヘンな小細工は一切なく、適切なテンポとバランスで進むので安心して聴いておれる。

メンデルスゾーンの素直な音楽が、こうあってほしいと思うような響きで鳴っている。毒にも薬にもならない音楽と言われがちなこの作曲家の曲が、こんな自然な呼吸で伸びやかに演奏される中、シートに深く腰掛けて流れに身をまかせていると情緒安定、とてもいいヒーリングだ。
 ソロパートのもう一段の表情とか、入りのところがもっとピシッと決まればとか、欲張りな注文も可能だが、でもまあ上等、上等。

休憩後のR.シュトラウスは、予想を遙かに上回る名演。私以上に辛口の友人が、演奏後にブラアヴォと声をあげたのにはびっくりしてしまった。一緒のことが多いのに、これまで聞いたことがなかったもので。
 各変奏の楽想の変化のつけ方、もともとの曲がよく書けていると言えばそれまでだが、充分なためをつくりながら、慌てず焦らず進んでいく堂々たる音楽になっている。

堤剛さんのチェロ、川本嘉子さんのヴィオラはがっぷり四つというか、丁々発止という感じで、二重協奏曲としての面白さ充分。堤さんのチェロの表情はやや甘めで主人公の夢想的性格を強調したように感じたが、それに対する川本さんのヴィオラの力強さ。地にしっかりと根を下ろしたような骨太の響き。私はこちらのほうにより惹かれた。ソリスト二人に対置すると、ちょっとソロ・ヴァイオリンが見劣りしたが、大した疵でもなし。

そんなに京都市交響楽団の演奏を聞いているわけではないが、この「ドン・キホーテ」は近年のベストなのではないかな。創立50周年にあたる来年、6月に東京交響楽団との合同による東西での「グレの歌」という企画があるようで、どちらも大友さんが掌握しているオーケストラだけに、単なるイベント以上の期待が持てそう。

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