高関健/大阪フィル@いずみホール ~ お帰りなさい、大阪へ
2005/12/3

世紀の終わりに近づいたころ、大阪でのオーケストラ演奏会では唯一、高関健指揮の大阪センチュリー交響楽団のコンサートが、音楽的な満足感を得られるものだった。少なくとも私にとっては…
 その人が大阪に戻ってきた。今度はあのころと見違えるようなオーケストラになった大阪フィルの客演指揮者として。

ひとまわり音楽が大きくなった気がする。もちろん、今の大阪フィルの力によるところも大きいだろうし、今日のコンサートマスターは長原幸太さんだったこともあるが、でもそれだけじゃない。

モーツァルト:交響曲第31番ニ長調K.297「パリ」
 シューマン:チェロ協奏曲イ短調作品129
   (チェロ:ガイ・ジョンストン)
 オネゲル:交響曲第2番

「パリ」交響曲は10-10-8-6-4の対向配置、堂々たる響きでシンフォニーが始まる。これがモーツァルトの意欲作だったことを彷彿とさせる。いつものシンフォニーホールとはひと味違った大阪フィルの弦セクションの厚みと緊密さ、いずみホールならではというところか。

もともと、センチュリー時代から、基本のところのアンサンブルをきちんと押さえて、音楽本来の美しさを伝えてくれる高関さんには信頼感があったのだが、今はそのベースの上に風格が伴ってきたように思う。堂々たる響きでありながら、厚ぼったくならないし濁りもしない。ブリリアントという言葉が似つかわしい「パリ」だった。

シューマンのコンチェルト、ソリストのガイ・ジョンストンは、まだ20代の英国人。前日に聴いた堤剛さんのチェロとは対照的、あちらが甘く華やかな音色を駆使するのと異なり、こちらはとても渋い、くすんだ音色だ。音が悪いとか鳴らないということではなくて、しっとりと落ち着いた響き、外連味のない美しいチェロの音だ。

協奏曲とは言いながら、ずうっとチェロが中心になって進む曲のようで、オーケストラと張り合うことはない。そういえばチェロのトップとの掛け合いもある。シューマンらしいオーケストラのパートが薄い作品のひとつ、補筆が必要なシンフォニーと違ってこれでもいいんじゃないという感じかな。

オネゲルも実演で聴くのは初めて。ナマで聴いていると二階バルコニー席なもので、弦の各セクションの分奏ぶりなどもよく見える。しかし、第二次大戦のさなかの作品とはいえ、凄まじい緊張感のある曲だ。

「パリ」交響曲のときも素晴らしかったのだが、それ以上の大阪フィル弦セクションの大迫力。行き詰まるような緊密さと、自在なテンポの変化、終楽章の後半になって加わる一本のトランペットが終わったあとのコーダの見事さ。これは、これは…

コンサートマスターの長原幸太さんなんて、この曲ではときに椅子から腰を浮かせて弾いている。この人、いつも弾くことが楽しくて仕方ない、やる気満々という感じだから、人間集団のこと、その"気"がオーケストラに如実に伝播している。それが高関さんのリードと相俟って、凄い演奏になる。そんなことを体験するのもライブの醍醐味。

さて、大植監督の4年目のシーズンとなる2006-2007シーズン、プログラムは未発表だが、会場で尋ねたところ12/12に発表ということ。楽しみだ。でも、いずみホールのシリーズの予定はないらしく残念。この日のプログラムのように、このホールならでは、というメニューが絶対にあるはずなんだけど…

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