「イドメネオ」@いずみホール ~ またしても、モーツァルトイヤー
2006/1/9

我が家に1982年のメトロポリタンオペラの映像があるが、何回観たんだろう。ひょっとしたら、一回きりだったかも知れない。唖然とするようなスーパースターたちの競演であることは確かなのだが、やはり退屈してしまい、聴き通すのは大変。長い。そう、今回も長かった。

"モーツァルト室内管弦楽団創立35周年記念第115回定期演奏会モーツァルト生誕250年記念特別企画オペラシリーズ第7回"という、これまたやたらに長い冠が付いた公演、成人の日の午後、いずみホールに出かけた。
 大阪城公園駅に降りると、ホームに若い女の子がいっぱい、階段・改札口は言うに及ばず、大阪城ホールに続く広い歩道にも溢れている。まさか、モーツァルトを聴きに来たわけじゃなかろうし、成人の日の式典というには、微妙に年齢がずれているし、衣装もそれらしくない。第一、男の子がほとんどいないというのもヘン。彼女たちが手に持っている「チケット譲って」の札を見て、なんのコンサートかだけは判った。内容はよく判らない"NEWS"とか。

キャパシティからすると、大阪城ホールの1/20ぐらいのいずみホールだが、ほとんど満席に近い入りだったのにびっくりした。私はほぼ半額で入手したが、定価5000円のチケットは決して安いとは言えないのに…

クレタの王イドメネオ:畑儀文
 王子イダマンテ:野間直子
 トロイの王女イリア:石橋栄実
 アルゴスの王女エレットラ:津山和代
 王の腹心アルバーチェ:二塚直紀
 ネプチューンの大司祭:松本晃
 ネプチューンの声:木川田澄
 指揮:門良一
 モーツァルト室内管弦楽団
 合唱:モーツァルト記念合唱団

一昨年の「フラーヴィオ」、昨年の「アルチーナ」で見事な歌を聴かせた津山和代さん、昨年の「カルメル会修道女の対話」で印象に残った石橋栄実さんの名前がキャストにあり出かけることにしたのだが、ちょっと不満の多い公演になってしまった。

オリジナル・ノーカット版(たぶんメトロポリタンオペラも同様)ということで、長いのは覚悟のうえだが、15分の休憩を二回はさんで各幕1時間(終幕はもっと)はしんどい。

私の場合、モーツァルトの著名なオペラは、「後宮からの誘拐」を除き、どれも長く思えて仕方ない。「イドメネオ」をノーカットでやるなら、各歌手の力量がかなりのものでないと苦しいと感じる。主役5人それぞれに複数の長いアリアがあり、合唱の出番も多い。一方でストーリーは単純だから、ドラマがスピーディに動くわけではない。それぞれの歌での、声の力・技巧・表現力が問われることになる(そのあたりはバロックオペラも同じ)。

不調だったのか終始生彩を欠いた野間さんは措くとして、他の人たちの歌は拙いということはないにせよ、聴いていてワクワクしたのは最後の津山さんの「オレステとアイアスの苦悩をこの胸に」というドラマティックなアリアだけ。

オリジナル・ノーカット版上演の意義は否定しないが、聴く側は学究的関心で来ているんじゃなく、所詮は道楽、楽しみのために来ているわけで、耳のしあわせ、オペラとして面白くなくっちゃ。

石橋さんの清楚なイリアは悪くないけど、如何せん言葉のキレが足りない。歌には響きすぎのこのホールのせいもあるけど。

畑さんは予想したとおり、フレーズを美しく響かせることに専念する嫌いがあり、高音のパワー不足を上手く回避しているものの、それが聴く側にとって欲求不満のもとになる。ドン・オッターヴィオならこれでよくても、クレタの王の歌としてはこれでいいんだろうか。

二塚さんは熱演で、ときにどっちが王なんだろうという感じでだったが、安定感はまだまだかな。

残念だったのはベテランの野間さん。これまで聴いたヘンデルでは大きな破綻はなかったのに、今日は全くの不調。高音域の部分はやっとこさっとこ、聴くのが辛い。ところが、野間さんのアリアの後、かぶりつき中央でただ一人大きな拍手をする身内とおぼしき人。でも、誰ひとり和するものなし。これが何度かあり、会場が鼻白む雰囲気になること夥しい。これも公演全体の印象を悪くした要因だ。

あっ、そうそう、最後に登場した木川田さんは二階バルコニーでの歌唱、反響板となる壁を背負ってという地の利はあったが、見事なバスだった。オーケストラの奥で1時間、所在なげに座っていたトロンボーンもこのときだけの大活躍。待つのも長くて大変。

没後200年がついこの間だったように思うのに、またモーツァルトイヤーなんだ。私としてはそんなに好きな作曲家じゃないので、モーツァルトの演奏が増える分、他が減ってしまうのではと、つまらぬ心配をしている。

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