旬の歌い手を聴く ~ 大岩千穂リサイタル@ザ・シンフォニーホール
2006/2/5
三日前に同じ会場で華やかなガラコンサートを聴いたばかり。今日はオーケストラがバックではなくピアノ伴奏(河原忠之)のソプラノリサイタル。頻繁に行くホールなので、そこで目にした1000円という武蔵野価格に惹かれて、即買い、だった。
この大岩千穂さんという人、私はまだ聴いていないが、チラシなどに自身の言葉でこのリサイタルに臨む気持ちを綴っているところに好感が持てる。それだけ、この大阪でのリサイタルに入れ込んでるのが窺える。値段もあるけど、だから、買い。
当初予定のプログラムが少し変更になっていた。「キャンディード」と「ポーギーとベス」からの歌が消え、「ボエーム」の二曲に差し替えて、プッチーニを後半にかためるという構成に。
ジーツィンスキー:「ウィーンわが夢の街」
J.シュトラウス:「春の声」
レハール:「メリー・ウィドウ」より"ヴィリアの歌"
グノー/バッハ:「アヴェ・マリア」
ドヴォルザーク:「わが母の教えたまいし歌」
ドヴォルザーク:「ルサルカ」より"月に寄せる歌"
ヴェルディ:「椿姫」より"ああ、そはかの人か~花から花へ"
(休憩)
プッチーニ:「ボエーム」より"私の名はミミ"
プッチーニ:「ボエーム」より"ミミの別れ"
プッチーニ:「蝶々夫人」より"ある晴れた日に"
プッチーニ:「蝶々夫人」より"かわいい坊や"
プッチーニ:「トスカ」より"歌に生き、恋に生き"
(以下、アンコール)
ポンセ:「小さな星」
デ・クルティス:「わすれな草」
プッチーニ:「つばめ」より"ドレッタの美しい夢"
プッチーニ:「ジャンニ・スキッキ」より"私のお父さん"
三日前に聴いた曲が4曲かぶっている。歌い手が違うと、同じ曲でもほんとに違う。だからオペラは面白い。
この人の高音のまろやかさは独特のものがある。冴え渡り唖然とするような声、逆に言えば機械的な感じもある声ではなく、柔らかく暖かみのある声だ。ミミの歌に差し替えたのも、判るような気がする。
ミミ、今月下旬には二期会公演の舞台が待っているから、そのお披露目ということもあるのだろう。練り上げられてきている感じ。この「ボエーム」、あの飯田みち代さんがムゼッタか。福井敬さんがロドルフォ。これは大変な聴きものになるかも知れない。前の週に東京遠征を企てているが、この「ボエーム」も聴けたらなあ。
今は真性リリコだろう。どの歌も楽しめたが、「トスカ」や「蝶々夫人」のようなスピントの色合いが入る歌よりも、「ルサルカ」などのほうが、より好ましいと思う。「ルサルカ」、そう、三日前に聴いた歌とは大違い、同じ歌とは思えないほど。
プログラムの間に大岩さんのトークが入る。次から次に歌うと大変だから喉休めということでもあるのかな。とても簡潔な言葉で、飾らない話しかたにも好感が持てる。プログラムが終了して、「試験が終わったときのように、ホッとします。さあ、これからリラックスして歌います」というようなことを。これは10曲ぐらいアンコールがあるのかなと思ったが、控えめに4曲。そりゃ大事な舞台が控えているし。
もともとは体育会系の人らしく、さっぱりした性格のよう。美人だ。心配なのは太りやすい体質と見えること。舞台人としても旬の人になると思うので、ヴィオレッタやミミが似合うスタイルを維持してほしいものだ。