大植英次/大阪フィル定期 ~ 聴き比べはしないけれど
2006/4/20

お昼に電話があり、大阪国際フェスティバルの招待券を2枚いただけるという結構なお話だったが、聞けば今夜のこと。「申し訳ないですが先約が…」とお断りして、ザ・シンフォニーホールへ。だいたい、こういうことは重なるものだ。

定期会員だけど、今年に入ってから2回パスしたので、久しぶりの大阪フィル定期演奏会となる。大植監督も4年目に突入し、新年度のスタート。この4月は大阪で立て続けに3つ、このコンビのコンサートが行われる(あとの2つは大阪国際フェスティバルと大阪城西の丸庭園での野外コンサート)。

ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
 R.シュトラウス:オーボエ協奏曲ニ長調
     (独奏:フランソワ・ルルー)
 R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

これまでずっと聴いてきていて、4シーズン目になって、ずいぶんと変化が感じられる。3年の積み重ねで、このコンビの意思疎通は緊密になったのだろう。以前は隅から隅まで振って行くという指揮ぶりだったが、今では馬なりに進むところ、手綱を締めるところ、鞭を入れるところ、自在になっている。観ていて聴いていて肩が凝るところがなくなった。指揮台も以前より一段高いものに替わった。理由は知らないが。

何と言っても、これまで客演だった長原幸太さんが、首席コンサートマスターの地位に就くことになったのが大きい。彼が座ると目に見えてオーケストラが活性化する。前任のロバート・ダヴィドビィッチさんは契約満了で退団とプログラムに記載されていたが、納得の人事だ。当分は長原さんを逃がさないようにしてほしい。オーボエの加瀬さんが東京フィルに移籍してしまったのは淋しいが、そこは他のメンバーに期待しよう。ちょっと見ない間に、他にもちらほらとメンバーの入れ替わりがあるようだ。もっとも、「英雄の生涯」は大編成だけに、エキストラも加わっているから何とも言えないが。

その「英雄の生涯」、標題音楽的なアプローチというのだろうか、かなり自由に各パートを各テーマを歌わせていたように思う。例えば長原さんの骨太のソロヴァイオリンなんて、恐妻家シュトラウスを想像してしまうような感じで、思わずニヤッとしてしまうし、うるさい批評家連中を模した楽器群の喧しさとか。

大植さん自身も、細部にそれほど拘らなくなってきたのかな。もっとクリアな音が出てくると思った割には、アンサンブルの多少の乱れは意に介さず、より流れを重視しているような感じ。一方で、ゲネラルパウゼの雄弁さは特筆もの。

個々の楽器、奏者をみると、さらにレベルアップしてほしいとは思うが、昔を知るものにとって、この3年の成果、ことに合奏能力の進化はめざましいものがあると思う。

前半のプログラム、私はあまり楽しめなかった。もともと好きじゃない曲ということもあるのだろう。同じシュトラウスといっても、作曲年代にして50年ほども隔たりがある。オーボエの妙技を楽しむならそれでいいのだが、協奏曲と言われてもねえ。オーケストラを聴く楽しみは薄い。作曲家80歳の枯淡の境地か、創作力の枯渇かということろ。

それにしても、この4月、京阪神地区のオーケストラの定期演奏会に「英雄の生涯」が目白押しだ。大阪センチュリー交響楽団(小泉和裕、仙台フィル共演)、兵庫県立芸術文化センター管弦楽団(佐渡裕)、京都市交響楽団(大友直人)という具合。別に記念の年でもないのに、示し合わせたように同じプログラムというのは何とも。

そうだ、在阪オーケストラの統合により演奏水準の向上をとおっしゃる関経連の秋山会長に、ただいま現在の各オーケストラの実力を聴き比べていただく格好の機会かも知れないなあ。

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