大阪国際フェスティバル/大植英次/大阪フィル ~ 終わりよければ、なのかな?
2006/4/26

このコンビの大阪国際フェスティバルへの出演が決まったのは、かなり遅かったと思う。もっとも、最近はいつも出遅れ気味のプログラム発表なので、こんなものかも知れないが。

大阪国際フェスティバル協会のホームページには、ずっとソリストの名前の記載がなかった。大植/大阪フィルの出演が決まって、それがアナウンスされても曲目が不明、ようやくマーラーの第5交響曲と発表され、プログラムの残りは何かなと思ったら、出来上がったチラシにはシューマンのピアノ協奏曲とあった。こりゃ、どう見てもオマケの位置づけだ。

台所事情は判らなくもないので、とやかく言うこともないが、別にコンチェルトを組み合わせてもらわなくても、というのが正直な気持ち。オーケストラピースで固めてもらったほうがよほど嬉しいのだが…

シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 (ピアノ:中野翔太)
 マーラー:交響曲第5番

シューマンはほとんど前座という感じだった。ソリストについて小賢しい論評は出来ないが、広上淳一のようなコンチェルトの才が、大植英次にあるとは思えない。下手をすると喰われてしまうような相手、これまでの例ではファジル・サイやヒラリー・ハーンのときは、とてつもなくエキサイティングなのに、格下の相手と組むと面白くも何ともない。どんな駆け出し相手でも、伴奏の域を超えたオーケストラの響きを創り出す広上の凄さを思い起こしながら、夢うつつでシューマンを聴いた。ボアリング!

それで、メインプログラムのマーラー第5。率直な印象を述べれば、大変に問題含みの演奏じゃなかったかしら。

実際のところはどうか判らないが、前半の三つの楽章の体感レベルのテンポの遅さは驚き。つらつら考えるに、学校帰りに道草を食ってばかりで、いつまでたっても家に辿り着かない子供のよう。あっちに、こっちに面白そうなものがあって気をとられて、寄り道、そんな感じ。それがマーラーだと言えば、そうかなとも思うのだが、やたら疲れる三つの楽章だった。聴き慣れたはずの曲なのに、こんなところで、あんなところで、おやっと思うような旋律が耳に届くのは新鮮と言えば新鮮。だけど音楽の流れは滞って…

各パートの奏者は大健闘だが、やはり凸凹は否定できないし、東京文化会館と同じく誤魔化しの利かない(良いものはより良く、ダメなものはどうしようもなく聞こえる)フェスティバルホールという厳しさもあったかも。

第4楽章のアダージェットで、それまでのストレスが解消されるという仕掛けをしたのだったら、大植の構想力や恐るべしということなのだが、果たして。ともあれ、このアダージェットは素晴らしい、大阪フィルの弦セクションの実力全開。続く終楽章での興奮と相俟って、全5楽章のシナリオが描かれていたのかも知れないなと、最後には納得してしまうような。

わりと淡泊気味、すっきりしたマーラーが多い昨今、響きの面では決して厚化粧じゃないけど、組立としては相当にねちっこいマーラーだったのではないかなあ。ある意味では、これまでの定期演奏会で披露したマーラーの交響曲(第2番・第6番・第3番)よりも密度が濃いと思う。

フェスティバル最終日ということで、出演者による「蛍の光」と、淀川工業高校のブラスバンドによるファンファーレで幕。何度も繰り返したカーテンコールの末に、大植/大阪フィルで奏でられた「蛍の光」での弦の美しさ、深さに感服。やはりオーケストラは凄い、そして、淀工の生徒たちの舌を巻く巧さにも。

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