小泉和裕/大阪センチュリー/「町人貴族」・「英雄」 ~ 危機感が生む?佳演
2006/5/25

前半のシュトラウスを目当てに聴きに行った公演、それだけで帰ってもいいかと思っていたのだが、終わってみれば全く逆、ベートーヴェンが思いの外よくて。

R.シュトラウス:組曲「町人貴族」作品60
   川崎洋介(コンサートマスター)、迫昭嘉(ピアノ)
 ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調「英雄」作品55

シュトラウスの目覚ましいオーケストレーション、小編成での各パートの妙技を期待していたが、なんだかこぢんまりとまとまった演奏だった。以前、このザ・シンフォニーホールの約半分のキャパシティのいずみホールで、大植英次/大阪フィルで聴いたときには、ソロの長原幸太さんの圧倒的な存在感、それに触発されたかのような大阪フィルメンバーの競演を楽しんだが、ずいぶん印象が違う。ホールの違いもあるのだろうが、オーケストラの性格の違いが大きいようにも思う。

珍しいことだが、ピアノ奏者の名前がプログラムにクレジットされている。迫昭嘉。普段はソリストでやっている人を加えたということなんだが、この曲ではヴァイオリンほど目立つ訳でもないのだけど。でも、名前に惹かれてコンサートに来る人がいるなら、それはそれで結構なこと。

「仕立屋の登場と舞踏」では、ソロ・ヴァイオリンが縦横無尽に活躍のはずが、川崎洋介さんはあまり目立たず、あくまでもオーケストラの一員という感じだった。もっと大暴れしたほうが面白いのになあ。

さて、後半の「英雄」、このオーケストラの美点が結晶したような演奏だった。突出したパートはないにしろ、バランスが良く、すっきりした響き。小泉和裕さんの指揮に機敏に反応する。キビキビした動きで贅肉のないベートーヴェン、爽快感のある演奏だと言える。

「英雄」は、どちらかと言えば名曲コンサートにラインアップされる演目だが、この日はまさにルーチンじゃない定期演奏会仕様の演奏だったと思う。東京とは違って、大阪フィルを別とすれば、残る大阪の3オーケストラは集客の問題もあり、定期演奏会のプログラムでも誰もが知っている曲を一つは入れないと、客が入らないという事情があるのだろう。その辺り、苦肉の策とも言えなくはないが、この日のレベルの演奏をしてくれるんだったら、そんなプログラムも悪いことじゃない。

一般紙でも採り上げた大阪のオーケストラ事情(統合問題)、一番煽りを受けそうなのがこの大阪センチュリー交響楽団だから、楽団員の危機感も相当なものがあると想像する。この日の佳演をもたらした緊張感を持続してもらえば、ファンの動員も期待できるだろう。予想したよりも客席の入りは良く8割方は埋まっていたし、終演後の聴衆の反応もこのオーケストラには珍しく熱のこもったものだった。

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