ヴァーレック/大阪シンフォニカ/「小ロシア」 ~ 関西オーケストラ聴き巡り
2006/7/13

例年なら夏休みシーズンを前にコンサートもオペラも夏枯れのはずが、関西では結構なラッシュ、私はオペラだけでも5回行く予定なので、ちょっとした異変だ。とりあえずはオーケストラから。すでに今月に入って京都市響と大阪フィルを聴いて、この日は大阪シンフォニカ。秋山さん、ご一緒にいかが。

リスト:交響詩「前奏曲」
 サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番
 チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」
 指揮:ウラディーミル・ヴァーレック
 チェロ:上村昇

定期会員になっている大阪フィルと比べると、客席の入りが淋しいものがある。贔屓目に見て6分程度の埋まり具合だろうか。私にとっては、4つの在阪オーケストラで、いちばん聴く機会が少ないのがこのオーケストラ。でも、今回の定期演奏会、実は大好きなチャイコフスキーの第2交響曲がプログラムに入っていたから、絶対行くぞと前から決めていたもの。第1交響曲は時々かかるようになったが、この曲って、ほとんど実演でやらないから。

何と言っても奇数楽章の斬新さが凄い。ソナタ形式の第2主題をいきなり提示して、ずいぶん後から第1主題が出てくるシンフォニーって、他に例があったかな。それが第1楽章。全編シンコペーションの連続とも言えるスケルツォ楽章。脂ののってきたチャイコフスキーがやりたい放題やっている感じの曲だ。ポピュラーな第4交響曲以降は、ちょっと取り澄ましたところも多く見受けられるが、前の三つの交響曲はとっても面白い。ここからショスタコーヴィチが生まれてくるのが判る。

これまでナマで聴いたことがないので、他の実演との比較は出来ないが、ヴァーレックの演奏はどぎついところまでは行かないけれど、けっこうメリハリのあるもので、オーケストラの好演ともども大変楽しめた。弦の厚みなど、ちょっと大阪フィルには見劣りするが、以前に聴いたときよりもだいぶ進化していると思う。

一年あまり前に阪哲朗指揮の大阪フィルの定期演奏会で、サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番を聴いている(ソリスト:アリソン・エルドリッジ)。どうしてもレパートリーが限られるので、チェロ協奏曲はいつも同じものの繰り返しになる。前回はつまらない演奏だったが、それに比べると、今回はずいぶんまとも。上村昇さんは、あまりソリストとしての登場はないようだが、きれいな音を出す人。でも、曲自体の魅力が…

プログラム冒頭の「前奏曲」は、有名な割にはあまり演奏されないのではないかな。たぶん私も実演では初めて。この曲、日本の生命保険会社が苦況に陥っていた頃、米系保険会社が格付AAAということを自慢げに、盛んに流していたCMの音楽という印象が強すぎて…。

だから、あまり名曲として鑑賞できなくなってしまったのだが、でも、あの会社はこの曲が含意するラ・マルティーヌの詩句を知って使っていたのかなあ。知っていたとすればブラック・ジョーク、日本人をバカにしているのだろうし、知らずに使っていたなら、おバカなアメリカ人というふうに思った記憶がある。そんなことが頭をよぎる。あまりテレビを見るのはよくないなあ。

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system