飯守泰次郎/関西フィル定期「青ひげ公の城」 ~ 上と下では大違い
2006/7/14

このコンビが毎年定期演奏会で採り上げるオペラ、満員札止めのこともあり、今回も売り切れ後の立見席1000円を待っていたが、その気配はなさそうだったのでチケットを購入。今月四つ目、渦中の関西オーケストラを聴く。

第186回定期演奏会/ザ・シンフォニーホール
   指揮:飯守泰次郎
 ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲
   ヴァイオリン:大谷玲子
 バルトーク:歌劇「青ひげ公の城」
   (演奏会形式、原語上演)
   ソプラノ:雑賀美可、バリトン:藤村匡人

二日続けてユニークなプログラムを聴くと、なかなか関西のオーケストラもがんばっていると思う。特に関西フィルは企画力では高く評価されているのも頷ける。この飯守オペラシリーズは力が入っているし、いつも期待を裏切られることがない。そして、この日も。

ずいぶん前に、飯守さんがこのオペラを指揮したのを聴いている。2000年11月、新国立劇場中劇場だった。あのときは、東京勤務になる直前、わざわざ上京し、「トリスタンとイゾルデ」(アバド/ベルリンフィル)、「青ひげ公の城」、「ジョヴァンナ・ダルコ」(若杉弘/びわ湖ホールプロデュースオペラ)と、カミサンに大目玉を食らったオペラ三昧でした。

あの中劇場のピットに、この巨大編成のオーケストラが入っていたんだろうか。シンフォニーホールの舞台狭しと並んだプレイヤーの数は半端じゃない。オマケに舞台背面、オルガンの左右には、8人のブラスが陣取っている。何より、あのときピットから響いていた音と、舞台の上で鳴っている音が全く違うのに驚く。第5の扉を開けたときのフルオーケストラの咆哮は凄まじい。圧巻。飯守さんは、ことさら音を絞ることはせず、バルトークのオーケストレーションの面白さを聴かせてくれる。舞台上のオーケストラならでは。舞台最前方に立ち、このオーケストラに負けずに歌ったソリスト二人は立派。原語なので字幕の助けを借りながらの鑑賞だが、テキストの意味を踏まえてしっかり歌えていたのが判る。こちらのオペラシーンでは何度か聴いている藤村匡人さんがなかなかいい。

オーケストラにはたくさんのエキストラが入っているはずだが、かなり練習を積んでいることが窺えた。飯守さんはオーケストラと正対する傍ら、左右後方に立つソリストに出のキューを出したりと大忙しの様子。舞台の上だと、指揮者の八面六臂ぶりが手にとるように判ります。7つの扉それぞれの表情づけと起伏、R.シュトラウス顔負けのオーケストラだ。「サロメ」と双子のよう。そういえば、あちらも7つのヴェールなんてのがあった。

このプログラムだと、ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲は、どうしても前座という感じになってしまう。でもインターミッションで帰る人もいるのが不思議だ。オペラは嫌いという人か、ソリストの関係者かな。もったいない。若い頃なら、外で待ちかまえて、「お帰りでしたら、チケット頂戴できませんか」という手を使ったかも。

ヴァイオリンの大谷玲子さんはアンサンブルでは聴いたことがあるのだが、コンチェルトでは初めて。大阪出身の新進。私の聴いていたバルコニーでは、音はきれいだけど、ややパワー不足を感じた。バックのオーケストラがおざなりじゃなくて、とても気持ちを込めて演奏していたのが印象的。

ワールドカップも終わって、ようやく落ち着いてコンサートに出かけられるようになったが、この夜は我がドラゴンズが眼下の敵、阪神(阪急)タイガースとの天王山その1。このコンサートのチケットを買っていなければ、福島(シンフォニーホール)じゃなく九条(京セラドーム大阪)に足が向いていたところ。でも、ストレスの溜まりそうな試合だったので、結果的にオペラで正解。

それにしても、原監督が気の毒でならないなあ。「ねえ、また巨人が負けたって…」と、古田ファンのうちのカミサンなら言いそうだけど、「高田の背番号」は絶対知らないですよ。さだまさし殿。

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