大阪新音フロイデ合唱団のヴェルディ「レクイエム」 ~ コーラス、曲がり角
2006/7/18

連休中の遊び疲れか、ぐずついた空模様のせいか、さあコンサートだという気持ちが盛り上がらないままにザ・シンフォニーホールに向かったのが良くなかったのかも知れない。途中いくども夢うつつ、はなはだ集中力を欠く1時間半になってしまった。

ヴェルディ:レクイエム
 独唱:尾崎比佐子、重松みか、竹田昌弘、三原剛
 合唱:大阪新音フロイデ合唱団
 管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
 指揮:高関健

端から男声陣の出来が期待はずれで、聴く意欲を失ってしまったのが正直なところ。楽曲の切れ目で退出すればよかった。タイミングを逸してしまったと後悔した。なかなかのメンバーだと思ったのに…

竹田昌弘さんはパルジファル、マックス、バッカスなどの役で聴いている注目のテノールだが、この曲では練られていないことが歴然。スムースさに欠ける歌いぶりで、準備不足か、宗教曲(ラテン語)での経験不足か。三原剛さんも関西を代表するバリトンのはずなのに、歌に雑さが目立った。それにひきかえ、尾崎比佐子、重松みかの女声陣は特に後半の出来はよくなって、宗教曲を、ヴェルディを聴く感じになったのが救い。

このコンサートは大阪新音フロイデ合唱団の公演であり、高関健指揮の大阪フィルやソリストたちは、新音からの出演依頼を受けてステージに立っているのだろう。定期演奏会とは違い観客動員の責任がない立場だ。大阪フィルの公式ページでもこのコンサートには言及が一切ない。

今回、あくまでもメインはコーラスなんだが、どうなんだろう。かなりの大人数だけどパワーがあまり感じられない。暗譜という努力は高く買いたいと思う。ただ、プログラムに言語指導の名前はなかったので、響きの違和感はどうもそこから来たのかも知れない。

男声メンバーの平均年齢は優に60歳を超えていると思う。中に会社のOBの顔を発見してびっくりしまった。きっと皆さん長い時間をかけて一生懸命練習したんだろうなあ。いつもの"第九"という訳にはいかないし…

大阪フィルもトップ奏者の顔が何人か欠けているし、指揮者の横に長原幸太さんの姿もない。ちょっと淋しい感じがしたが、オーケストラは手抜きしている訳でもないだろう。高関さんが指揮するから行くことにしたようなものだが、指揮は冒頭の最弱音から怒りの日の激しさまで、メリハリが利いていて立派なものだ。でも、コーラスも含め全体としてみたらヴェルディを聴いているという感じがほとんどないというのが率直な印象。

新音というのは昔の労音、特定政党との関係が強い団体だ。同じ大阪フィルが出演するといっても定期演奏会の雰囲気とはかなり違う。二階席最後方で聴いたが、開演5分前に客席でおにぎりを食べていて係員に注意されている人がいたり、演奏中に勝手に出入りする人がいたりとヘンな客席。オークションで1050円で入手したのだが、いちおう定価6000円、この演奏会のチケット、どういうふうに売って、どういう人が買っているんだろう。謎だ。

シーズン後半の定期演奏会でも音楽監督によるヴェルディ「レクイエム」が予定されている。そこでのコーラスは大阪フィルハーモニー合唱団、こちらもアマチュア団体だが、最近再オーディションを行い何と150人中の50人足らずしか残らなかったと聞く(100人が馘)。ドラスティックなことだ。誰かが悪者にならなければ、改革はできないとは思うし、聴く側の立場からすれば水準が上がるのは歓迎。その反面、プロオーケストラとの共演を励みに長年にわたる手弁当の人たちの気持ちも想像に難くない。

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