若杉弘/大阪センチュリー交響楽団 ~ いつもながらプログラミングの妙
2006/9/22

4日しかない一週間だったが、毎日バタバタと過ごしたあとで、金曜の夜に素敵なコンサートを聴いて気分がすっきり。

J.C.バッハ、バルトーク、ベートーヴェン、なんだか変わった取り合わせの演奏会だなあと思いつつ、ザ・シンフォニーホールに足を運んだが、聴いてみると謎が氷解、キーワードはシンメトリカルだ。

J.C.バッハ:2つのオーケストラのためのシンフォニア作品18-1
 バルトーク:弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽
 ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92

J.C.バッハ(J.S.じゃない)の作品は、事前には「交響曲変ホ長調作品18-1」と案内されていたが、プログラムには上記の記述。弦楽器+オーボエ・ファゴット・ホルンが舞台下手、弦楽器+フルートが舞台上手という配置で、掛け合いのように演奏する。

この三楽章の短いシンフォニアが終わって、バルトーク。奏者がいったん舞台から退き、並べ替え大作業かと思ったら、それはなく、すぐに人数が増して再登場、初めから舞台中央にピアノやチェレスタが置かれていたので、その準備は不要にしても、弦楽器奏者は前の曲とほとんど変わらない場所に座るだけ。舞台上手の第2オーケストラの位置には第3ヴァイオリン以下の楽譜が置かれている。そうか、時代や地域は異なるものの、編成、発想の近似ということで前半のプログラムを作ったんだ。

いかにも若杉さんらしい一ひねりだ。ジャズオーケストラとのコラボや、オールヴァイル・プロ、「町人貴族」+ 「ナクソスのアリアドネ」、ヴェルディのバレエ音楽全集、古いところではテーマ別ワーグナーハイライトシリーズなど、プロデュースの才と言うか、まずプログラムでオッと思わせる人だ。たぶん今回の定期演奏会客演は一か月後に迫ったびわ湖ホールでの「海賊」の準備を兼ねたものと推測するが、あのヴェルディ初演シリーズも最初が「ドン・カルロ」五幕版だった。

次のシーズンからの新国立劇場のプログラムがどんな風になるのかな。「ニーベルンクの指輪」四部作再演の噂があるようですが、「フィガロ」三部作(ロッシーニ、モーツァルト、ミヨー)連続上演なんてのも面白いだろうなあ。今シーズンに予定の「蝶々夫人」を、次はブレッシア版、ミラノ版でもやるとか。

話が横道に逸れたが、この夜の演奏、たんにプログラムの面白さというだけではない。いつもと違うコンサートマスターが座っているなあと思ったら、客演の松野弘明さんということ。大阪フィルの長原さんと同じく、エネルギッシュな弾きぶりです。全身でオーケストラをリードしていくのがよく判る。高関健時代によく通った大阪センチュリーの美質が蘇ったように感じました。ホールを満たすボリューム感や音の厚みには欠けるものの、それを補う各楽器のバランスの良さとアンサンブルの確かさ。前半の二曲はいずれも、精緻なオーケストラの響きを堪能できた。バルトークなんて、視覚が伴うと面白さが増す曲だ。録音で聴いていてもピンとこない。そのバルトークがこの演奏会の白眉、普段はソリストへのお義理の拍手が多い休憩前のプログラムだが、この日の拍手は長く、そして心がこもっていたような気がする。

前半の余韻を残して、後半はパスして帰ってもいいかなと思ったが、そこはもったいない精神で、やはり最後まで。このベートーヴェンもなかなかの演奏。前後半の二楽章ずつを続けて演奏し、対比感がくっきり。ここでも前半プログラムを踏襲してか、オーケストラは対向配置だ。5月に聴いた英雄交響曲(小泉和裕指揮)もよかったし、この第七交響曲も贅肉のないすっきりと締まった演奏、財政的に厳しい逆風の中だが、いま大阪センチュリーはちょっと注目かも。

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