大阪シンフォニカーのマーラー第4交響曲 ~ ベスト・ソリューション
2007/1/26

会場でプログラムをもらって、「あれっ」と思った。「こんなメニューだったかなあ…」

マーラーの第4交響曲がメインに違いないけど、前半がシューベルト。会場に残っているチラシをよく見ると、小さな活字で「演奏曲目が変更になりました」とある。「そうか、やっぱり」

もともとは、モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲、モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」というのが、休憩前のラインアップだった。それで、今回の定期演奏会、一回券を買ったのに。まあ、S席をオークションで半額だから文句はないけど。

大阪シンフォニカー交響楽団
 指揮:寺岡清高 ソプラノ:半田美和子
 シューベルト::交響曲第4番ハ短調D417
 マーラー:交響曲第4番ト長調

仕事でドタバタした一週間の最後、こりゃあ前半はおやすみかなあと思ったとおり、シューベルトは始まってすぐに夢うつつ状態、なので、前半の印象はなし。

さて、マーラー。第1楽章、第2楽章、なんだか音が荒っぽいし、楽器のバランスもヘン。意識的にそういう表現を指向したのか判断がつかないが、ちょっと居心地の悪さを感じる。ソロを含めヴァイオリンのフレージングの素っ気なさ、楽譜の音をいくつか飛ばしているのか、本来の音値に足らないまま先へ進んでいるのかとさえ思えるほど。そして、突如として異様な大きさで聞こえるベルアップの縦笛群、ここまで鬼面人を驚かすような効果をマーラーが狙ったとも思えない。ユニークと言えばユニークな演奏だが。

ところが、第3楽章になると、うって変わった落ち着きが出る。この楽章は全曲の中心なので、ここをきちんと演奏すれば、好感度は高くなる。その点では合格。しっかりとオーケストラを歌わせているし、弦楽中心のゆったりとした流れと、ここぞというところのトウッティとの対比も見事。

このシンフォニーをはじめ、一部に声楽が入る曲の場合、どのタイミングでソリストやコーラスを舞台に上げるか、いつ立たせるのかが大きな問題となる。最初から舞台に上げたら、歌わなくても出番までに疲れてしまうし、楽章の切れ目で入場させると、ザワザワするうえに拍手が出たりして一曲の流れが分断されてしまう。

あっと驚く、見事なソリューションだった。第3楽章の終結部、ヴァイオリンの上向音に続き315小節目からフルオーケストラが鳴り響き、トランペットとホルンが高らかに歌う、それに導かれるように舞台下手から純白のドレスの半田さんが、ヴァイオリンセクションの中をゆっくりと中央へ進む。オーケストラが徐々に鎮まり、最後はフルートとヴァイオリンだけで静かに終わる。ほとんどアタッカのように終楽章に入り、ソプラノソロが始まる。

「ここではホルンは立ち上がって演奏する」(第1交響曲)、「少なくとも5分間の休止を設ける」(第2交響曲)など、音楽表現以外の指示をスコアに書き込んでいるマーラーだが、この曲でのソプラノソロの登場の仕方についての指示はないはず。あちこちで何度も聴いてきましたが、第4交響曲でこういう方法を採ったのを見たのは初めてだ。オペラのプリマドンナの登場のよう、実に効果的で、しかも音楽の流れを損なわない。誰のアイディアか知らないが、これしかあり得ないと思えるほど。

第4楽章のオーケストラは、とても丁寧に、抑えて伴奏していた。もともと、そういう指示があるので当然だが、それまでの三つの楽章の続きなので、なかなか難しいと思う。ここでも合格点。半田さんの歌唱も好感の持てるもの。ただ、惜しむらくはパワー不足。この曲でパワー不足とはヘンな言い方だが、充分な余裕をもって軽めに歌うと、この曲の魅力が引き立つ。それと、譜面を持って歌うのはサマにならない。暗譜でやってほしいものだ。スザンナやパミーナのアリアを舞台で楽譜見ながらということは考えられないし、これは演奏機会の多い曲だから、暗譜して損はないはず。そうすれば、余裕もできるし、表現も豊かになる。そこが残念。

会場はほぼ満員、経営が苦境にある三洋電機がスポンサーを降りたあと、なんとか大和ハウスが引き継ぎ、オーケストラも一安心したところで、今後の健闘を期待したいものだ。2007-2008シーズンのいずみホールでのシリーズは大変面白そうなプログラムで、私は早々に通し券を買った。

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