スロヴェニア国立マリボール歌劇場ガラコンサート ~ 前夜の瀬踏み
2007/4/17

中之島のフェスティバルホールの取り壊しがついに決まったようで、来年の第50回大阪国際フェスティバルでホールの歴史に幕が下ろされるようだ。大阪のオーケストラの定期演奏会は、何年か前に全てシンフォニーホールに移ったし、ここでのオペラ公演は東欧の団体が中心、メジャーなところは大津か西宮のオペラハウスというのが通り相場になった昨今、老朽化に伴う建て直しは避けて通れない課題だった。折しも、景気回復と京阪電車の中之島への延伸という追い風が重なった。四つ橋筋を挟んだフェスティバルホールと朝日新聞ビルが高層のツインビルに生まれ変わり、新しいホール(オペラハウス)もその中に入るようだ。楽しみ。

さて、今年の大阪国際フェスティバルの目玉は何と言っても「ラクメ」、ランカトーレが歌うレアものオペラということで、早々に大阪国際フェスティバル協会でチケットを購入、そして、前日のガラコンサートでも彼女がオランピアのアリアを歌うということを聞いて、こちらも追加購入。ところが、曲目は差し替えになった。

それにしても、ガラコンサートとは言え、ごった煮のプログラムだ。まあ、ベートーベンの時代なら、この程度は序の口だけど…

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調
 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
   ヴァイオリン:川畠成道
   指揮:ロベルタス・セルヴェニカス
           * * *
 マスカーニ:「イリス」前奏曲(コーラス付き)
 モーツァルト:「魔笛」より「復讐の心は地獄のように胸に燃え」
   ペーティア・イヴァノヴァ
 ヴェルディ:「リゴレット」より「風の中の羽のように」
   ヴァシール・クロホルスキ
 グノー:「ファウスト」より「何と美しいこの姿」
   サビーナ・ツヴィラク
 レハール:「微笑みの国」より「君こそ我が心」
   ヴァシール・クロホルスキ
 ロッシーニ:「セヴィリアの理髪師」より「今の歌声は」
   ペーティア・イヴァノヴァ
   指揮:ロベルタス・セルヴェニカス
 ベッリーニ:「清教徒」より「彼らは遠くに行ってしまった」
   チェルソ・アルベロ
 ブロッホ:主題と変奏曲「おお!恋人よ帰れ」
   デジレ・ランカトーレ
   指揮:フランチェスコ・ローザ

マリボール歌劇場管弦楽団と合唱団、いかにもオペラハウスのオーケストラ、コーラスという雰囲気で、好感を持った。レベルはそんなに高くはないが、年初に来日したベルガモ・ドニゼッティ劇場とどっこいどっこいかな、あるいは少しいいかも。

現地での上演の際のBキャストの人がガラコンサートでは2曲ずつ歌って、今回の公演ではスタンバイということだろう。最後の2曲を歌った翌日の主役二人が、その声質を考えるに、「連隊の娘」からアンコールとして1曲ずつ歌うのではないかと期待したが、明日に備えてということのようだ。

夜の女王とロジーナを歌った小柄なイヴァノヴァはこの劇場のプリマのようだ。スケールの大きさはないものの、きっちりまとめた歌という印象。一方のイケメンテノールのクロホルスキはマントヴァ公はやや雑な歌いぶり、声が安定せず、高い声域は苦しいところが。スー・チョン殿下のようなオペレッタのナンバーのほうがまだ合っている感じ。マルグリートを歌ったツヴィラクは、なかなかアピールするものを持っている。舞台映えする人だ。この人は「ラクメ」での出番もあるようだ。

最後の2曲の前に指揮者が交代、翌日のオペラのモードに。いや、指揮者の違いは大きい。イタリアの劇場たたき上げの人のようで、ずっと音楽が締まる。

アルベロの歌ったアルトゥーロのアリア、リリックな柔らかい声で、フランスものには合いそう。ただ胸声で最高音を決めたのはいいが、そこだけのフォルテが完全に浮いてしまって、まるで音楽的ではない。こんな調子で、翌日の公演を務めるのなら、かなり聴くのが辛くなりそう。

ランカトーレは正月のルチアと同じ印象。楽々と高音をクリアする反面、音色のムラが気になる。また、一部に全く響かない地声のフレーズが紛れ込むのもちょっと心配な点だ。あれっという感じになる瞬間がところどころ。彼女が転けたらどうしようもないので、翌日の目覚ましい歌唱に期待。

前半の川畠成道コンサートでは、メンデルスゾーンでソリストとオーケストラのピッチが合わないという事態が。本来は続いて演奏される第二楽章と第三楽章の間で、チューニングをするという珍事があった。曲が始まってから感じ続けた違和感はそういうことだったのか。オペラハウスのオーケストラなので、低めに合わせているのかも知れない。しっとりとした音色と感じたのもそのせいかな。

川畠成道のヴァイオリンはアクの強い演奏だ。独特の歌い回しで、好き嫌いが分かれそう。私はあまり感心しなかった。東京では、このコンビでヴォルフ=フェラーリのコンチェルトの日本初演をするらしい。耳にタコができたメンデルスゾーンよりも、そちらを聴いてみたかった。

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