大阪フィル定期のショスターコーヴィチ第5交響曲 ~ 大植英次の目に泪
2007/4/20

新年度、定期演奏会のラインアップにいまいち魅力を感じず、4年継続した定期会員を更新しなかった。そして一回券に転向、3階バルコニーの後列に降格、1000円席を買って新シーズン最初の演奏会へ。大植監督就任のシーズンの最後に採り上げたショスタコーヴィチの第7交響曲が素晴らしい出来だったので、今回の第5交響曲に期待。前半のラフマニノフのコンチェルトはどうでもよかった。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30
 ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47
   指揮:大植英次
   ピアノ独奏:オレグ・マイセンベルク

マイセンベルク、ずいぶん大きな音を出すピアニストだ。曲が曲だけにテクニック全開、バリバリ弾くという感じ。オーケストラはオマケみたいな曲だ。ピアノ音楽にあまり興味のない私としては、この長い曲に付き合うのはしんどいものがある。ピアノ好きには堪えられないかも知れないが。

そのあまり充実したとは言えないオーケストラパートを引きずったのか、お目当てのショスタコーヴィチになっても、各パートが生彩を欠いたように聞こえる。それが一転、集中度を増したのが、第2楽章から。冒頭の低弦の響きからして、第1楽章のそれとは大違い、受け渡される楽器群の音色にも一本筋が通ったようになる。デリケートなところとダイナミックなところの変化もくっきりとしてきて、第1楽章に比べどんどんとフォーカスが合っていく感覚。第3楽章の息の長い弦楽器の歌、そして嵐のような第4楽章。私の世代の大阪の人間なら誰でも知っているこの終楽章、昔の大阪ローカルの刑事ドラマのオープニングテーマだ。権力に逆らい笑い飛ばすショスタコーヴィチには大阪がよく似合う。

進むにつれて熱が高まるショスタコーヴィチの演奏だった。長原コンサートマスターも久しぶりに途中からは腰を浮かせるほどの熱演。満席、補助席まで出る大入り、1700人と一匹(一階中央に介助犬の姿)が聴き入った音楽監督復帰の演奏会だった。

2月の定期演奏会で予定されていたマーラーの第9交響曲、入院によるキャンセルという事態を経てのシンフォニーホールの指揮台、聴衆の拍手と歓声がよほど嬉しかったのだろう。客席を向いて頭を下げた大植さんが、思わず泣き出し長原さんに抱きついくという場面が…。ステージから復帰の挨拶があるかも知れないとは思ったが、予想外の展開。音楽以外のことではあるが、こういうところもこの人の人気の所以なのだろう。GWには大阪城で、きっと万単位の動員となりそう。

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