パッパーノ/サンタチェチーリア管弦楽団 ~ 不入りに唖然
2007/7/1

いわく付きのコンサートとなった。手許には二種類のチラシがある。ソリストに予定されてたマルタ・アルゲリッチが早々に来日中止となり、プログラム変更。ラヴェルのコンチェルトがベートーヴェンの第5交響曲に差し替えとなった。払い戻しは受け付けるは、値下げ分の返金はするわと、珍しい事態に。ピアノ音楽は好きじゃないので構いはしないが、マルタ・アルゲリッチは聴いてみたかった。

環状線の福島駅からシンフォニーホールに向かう道、コンサート前にしちゃ人通りが少ない。着いてみてびっくり、客席の3割も入っていない。開演時間になると増えてはきたが、せいぜい4分の入り。大植/大阪フィルの大入りに慣れていると、ここまで閑古鳥が啼いたコンサートはちょっと覚えがない。このホールで開催されるアジア・オーケストラ・ウィークでの○○響以来だなとの客席の声。それにしても、著名ピアニストのキャンセルの影響は凄まじい。招聘元にしたら踏んだり蹴ったりだろう。もっとも、興業保険に入っているかも知れないが。

オーケストラのメンバーが順次舞台に登場すると、少ない聴衆から拍手喝采が続く。何となくやけくそ気味のようでもあるが、少しでも盛り上げて、頑張ってもらわなきゃ元が取れないという大阪人らしいところ。それも悪いことじゃない。そして、閑古鳥は啼いても白け鳥は翔ばず。終わってみれば大変な盛り上がり、4分の客席が満席のようだった。

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調
 マーラー:交響曲第1番ニ長調
 プッチーニ:「マノン・レスコー」間奏曲 アンコール)
 ロッシーニ:「ウィリアム・テル」序曲より「スイス軍の行進」(アンコール)

爽快、疾駆するベートーヴェンだった。速いテンポでグイグイ突き進む。頭の音が激しく強いが、不思議に軽い。両端楽章の提示部の繰り返しでは、二度目が目に見えてヒートアップする。表面を丁寧に整えるというよりもエネルギーの噴出を優先する演奏だ。

プログラム後半のマーラーはそれとは対照的、思いっきり道草を喰いながら歩を進めるという趣き。第1楽章なんて鳥の鳴き声を模す楽想はじめ、自然の佇まいをゆったりと眺めるよう。第2、第3楽章ではテンポを極限まで緩めて歌うかと思えば、急速なフレーズにあっと言う間に移る。各パートにのびのびやらせているようでいて、音楽が弛緩しないのはなかなかのもの。ベートーヴェンではタクトを使っていたのに、マーラーは素手で。何だか逆のような気もするが、鳴らされる音楽を聴いていると、それもなるほどという感じ。個人的には、土曜日が夜間の勤務だったので睡眠不足の極みだったが、どちらも全く眠気を催さないという演奏となる。

そして、おまけの二曲が圧巻。悪いはずはなかろうお国ものとはいえ、予想以上。本番プログラムのパート譜の下に、この二曲が置かれていたのを確認していたので、ワクワクして待っていた。

「マノン・レスコー」間奏曲でソロを弾くヴィオラやチェロの上手さ、いや、うまく弾くと言うよりもうまく歌うということ。ソロから始まり厚みを増していくオーケストラ、ほんとにエモーショナル、続くル・アーブルの港の場面、ニューオーリンズのはずれの荒野の場面のイメージが駆けめぐる。

「ウィリアム・テル」の爽快感は、プログラムのベートーヴェンに通じる。そして、プッチーニの粘りはマーラーに通じる。アンコールも含めシンメトリカルな構成かな。

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