関西フィル定期「フィレンツェの悲劇」 ~ Cavalleria tedesca
2007/7/19

仕事の関係で前半のシベリウスはパスしたが、メインの演奏会形式オペラには余裕で間に合った。CDでは聴いたことがあるが、ナマはもちろん初めて。東京では以前に演奏されていたとは思うが…

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47
 ツェムリンスキー:歌劇「フィレンツェの悲劇」
   指揮:飯守泰次郎
   ヴァイオリン:清永あや
   メゾ・ソプラノ:福原寿美枝
   テノール:根木滋
   バスバリトン:片桐直樹

商売で留守がちの夫の不在中に、妻が若い男といい仲になる。妻の浮気を知った夫が決闘の末に相手を殺害するというプロットの一幕オペラ。あれっ、同じようなオペラを最近観たような…

そう、これは「カヴァレリア・ルスティカーナ」ならぬ、「カヴァレリア・テデスカ」かな。まるでパロディみたいな感じがする。もちろん、違うところは色々あって、同じイタリアが舞台といっても、かたや田舎のシチリア、かたやフィレンツェの都。相手の男は庶民ではなくて貴族、ストーリーを彩る美しいアリアもなければ、コーラスもない。緊張のなかの弛緩というようなインテルメッツォもない。ただただ、破局まで一直線に進む。

端から殺意をもって若い男をいたぶり、追い詰めていくすさまじさ。台本では初めは商売の話などが交わされて、夫が妻の不貞に気付くのは後のほうかとも表面的には見えるが、私は最初の場面からだと感じる。殺意が露わになる幕切れ直前まで、長い台詞で一時間かけてネチネチとオペラにするのはやはりドイツ的な感覚か。

このオペラのキーロールは夫シモーネ役のバリトンで、大半の部分が彼の歌というか語るような歌。片桐直樹さんの熱演と飯守さん率いる大オーケストラ、なかなかの仕上がりで、密度の濃い演奏だった。オーケストラのかなり長い前奏、普段聴いている大阪フィルの音と比べると人数は多いのに弦の響きが薄いなあという感じだったが、歌が入ってくると、これもかえって適度なバ ランス。前半のシベリウスがどんな演奏だったのか知らないが、ツェムリンスキーに力を注いだのがよく判る。この作曲家、東京で沼尻さんの指揮で聴いたときも同じ印象だったが、オーケストラの音符が多すぎて、雄弁なようでいて饒舌すぎるような気がする。リヒャルト・シュトラウスだと豊饒な響きが過不足なくという感じなのに、ツェムリンスキーは無駄な音がかなり詰まっているような。

さて、舞台付きなら相当過激な演出も飛び出しそうなストーリーと陰惨な結末、こういう場合でも何故かカタルシスがあるイタリアオペラとの違いか、暗さがずっしりと残り、盛大な拍手も湿りがちなのはドイツ作品の、らしいところだろうか。

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