大阪シンフォニカー交響楽団いずみホール定期 ~ 期待のシリーズ
2007/8/3

在阪オーケストラのちょっと新鮮味に欠けるプログラムの定期演奏会が並んでいる中、これは異色の4回シリーズ。ずいぶん前に通しのチケットを買った。いちおうやってますという申し訳程度に新しい時代の作品を混ぜるのとはひと味違う。期待していた"近代音楽へのアプローチ"と題する大阪シンフォニカー交響楽団のいずみホール定期演奏会。なかなか楽しめた。

ラヴェル:クープランの墓
 バーバー:ノックスヴィル・1915年の夏
 糀場富美子:輪廻
 ストラヴィンスキー:「プルチネルラ」組曲
   指揮:大山平一郎
   ソプラノ:半田美和子

会場の入りは800人のホールの6~7割というところだろうか。このプログラムにしてはよく入ったほうだと思う。ありきたりの定期演奏会に飽き足りない人も結構いるんだ。

半田さんのソプラノソロが入るのはバーバーと糀場作品、不勉強なもので、バーバーの曲が何語のテキストかも知らず、字幕もないのでさっぱりわからず。どうも英語のようらしいが、ついに一語も聞き取れず。あーあ、TOEIC800点を超えたころもあったのに、情けないことだ。会場の後ろから二列目という距離のせいか、半田さんのディクションに問題があるのか、私の耳が衰えたのか、たぶんそれぞれの要素の集積だろう。後で見たら、公演プログラムに訳詞が掲載されていたが、照明を落としたホールであんな細かい字が読めるはずもない。あーあ、耳も目も老化。歌詞は全く聴き取れなくても、バーバーの抒情的なメロディの美しさは堪能できたので、まあいいか。

休憩のあと、空っぽの舞台に指揮者の大山さんが作曲者の糀場さんを伴って登場、「普段演奏する作品の作曲者はほとんどの場合は故人、再現芸術に携わるものにとって作者の意図を直接聞きたいと思うことが多いが、今日は滅多にない機会…」ということで、糀場さんから作品解説。チベットの宗教書が元になっているそうで、死の瞬間から魂が生まれ変わる時までを表す7つの楽章、嘆きから諦念、魂の新生に至る流れらしい。テクストはヴォカリーズに加え、パーリー語、サンスクリット語ということなので、かえって歌詞に気をとられることもない。

楽器の使い方や構成についても付言されていたので、ちょうどいい事前レクチュアとなる。音楽自体の書き方もシンプルなので大変にわかりやすい。冒頭の曲ではいきなり後方から半田さんの声が聞こえてきたのでびっくり。かと思えば舞台袖から再登場する際にはお遍路さんの鐘を鳴らしながらという趣向。

この夜のプログラムでは、この「輪廻」が一番の出来ではなかったかしら。ことさら表面的に東洋的、仏教的な面を強調せず、西洋のオーケストラを逸脱しないで自身の語法で作品を書いている態度に好感が持てる。もっとも、作曲者が直接に説明してしまうということは、演奏される音楽がそれ以上でもそれ以下でもなくなってしまうという面があるが。

プログラムの最初と最後は比較的ポピュラーな演目、ストラヴィンスキーのほうがずっと良い出来だった。奏者がのびのびと演奏しているように見える。多彩なパートの組み合わせ、溌剌としたリズム、若い奏者たちの美質が素直に出ていたように思う。逆にラヴェルはちょっと萎縮気味、この曲の微妙な音のバランスと管楽器のニュアンスの出し方はとても難しそう。なかなか、名演にお目にかかれない曲だ。そんなことで、期待の割には…との出だしでしたが、終わってみれば、かなり満足度の高いコンサートとなった。

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