ラモン・ガンバ/大阪フィル定期 ~ 今シーズンのベストかも
2007/9/13

新鮮味のないプログラムなので定期会員を辞めた今シーズン、一回券に転向して単品買いに走る。最安席をオークションで定価(1000円)で入手してシンフォニーホールへ。仕事の関係で前夜の睡眠不足もあり心配だったが、何のことはない、普段のコンサートで感じる二曲目(コンチェルトのことが多い)の眠気も出現せず、終わってみれば大阪フィル今シーズンのベスト、これはとてつもなく安かった。

アダムズ:歌劇「中国のニクソン」より「主席は踊る」
 コープランド;クラリネット協奏曲
 ブリテン:組曲「ソワレ・ミュージカル」
 レスピーギ:交響詩「ローマの祭」
 指揮:ラモン・ガンバ
 独奏:マーティン・フロスト(クラリネット)

客席の入りは6~7割で、最近は満席を見慣れているので空席が目立つ。本来、こういうプログラムこそ人気の音楽監督が振るべきだと思うが、初客演の新鋭だからこそ、ここまでの快演が出現したのかも。

冒頭の「主席は踊る」、3月に西宮のオーケストラでも聴いた曲だが、やはりオーケストラの実力が段違い。各パートの精度、合奏能力、そして特筆すべきは、この日のプログラム全てで顕著だった分離の良さ。

指示がとにかく明確、わずかのリハーサルで臨む客演指揮者にとっては、本番は自然体でという訳にいかないので当然ではあるが。この人、ラテン系の名前だけど英国人とのことで、短く刈り込んだ髪とがっちりした体躯、指揮者というよりもラグビー選手のようだ。サッカーならご当地ガンバ大阪か。

いかにもスウェーデンというブロンド、長身痩躯、イケメン、クラリネットのマーティン・フロストは人気がありそう。舞台衣装も襟の部分がシルバーの絹というお洒落ぶり。もちろん、テクニックも大したものだ。クラリネットという楽器は弦楽器の弱奏と極めて相性がよくて、このコープランドの作品も管楽器・打楽器は外した編成。休憩前のアンコールでは二曲目に弦のトップ奏者がゆったりとメロディを奏で、クラリネットがオブリガートで絡むというパフォーマンスまでサービス。珍しいものを聴いた。この人、休憩後には着替えて客席に現れ、後半プログラムを聴いていたのにも好感が持てる。たいがいのピアノ奏者だと、特定ジャンル以外の音楽には一切関心を持たない人が多いのだから。

ブリテンの「ソワレ・ミュージカル」、短い舞曲のセットで、どこかで聴いたような楽想で、あとでプログラムを読んだらロッシーニのパロディのよう。なかなか魅力的な作品だ。聴いているときは、ショスタコーヴィチの「ジャズ組曲」と感じが似ているなあと思っていた。そう言えばショスタコーヴィチにもロッシーニのパロディがあった。

最後の「ローマの祭」、有名度から言って、これだけが客寄せのピースだが、快演、爆演だった。とことんオーケストラを鳴らすが、どぎつくならないのは、濁りのない各パートの明瞭さのおかげ、爽快感すらあります。ここ数年のオーケストラの進境もさることながら、初めて聴くこの指揮者、なかなか、ただ者ではない。

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system