KBS交響楽団 ~ 良くも悪くも韓流
2007/10/3

毎年開催されるアジアオーケストラウィーク、今年の大阪公演は一夜のみ。東京公演に登場する昆明交響楽団、インド=スリランカ交響楽団だと、さすがに閑古鳥が啼くとの判断なんだろう。唯一、韓国のKBS交響楽団だけがザ・シンフォニーホールの舞台に立つことに。

どんな演奏か予想もつかないが、まあ1000円なら後悔もないだろうと、早々にチケットを購入していた。この秋、日比谷公会堂ではショスタコーヴィチの全15曲を連続演奏する催しがあるけど、「1905年」シンフォニーなんて、大阪じゃ滅多に聴けないし。

JR福島駅のガード下の行きつけの店で、開店15周年記念、15週連続、生ビール・焼酎150円(何杯飲んでも)という素晴らしいイベントで道草を喰ったので、会場に着いたときにはコンチェルトの終楽章が始まるころ、ホワイエでほろ酔い気分を醒ます。

チェ・ソンファン:「アリラン」
 ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調
 ショスタコーヴィチ:交響曲第11番ト短調「1905年」
   ピアノ:キム・ソヌク
   指揮:チャン・ユンスン
   管弦楽:KBS交響楽団

このショスタコーヴィチのシンフォニーは、日本フィルのラザレフ指揮による演奏が強く印象に残っている。暴虐と哀しみを見事に音化したドラマティックな演奏だった。pを5個ぐらい重ねたのではないかとさえ思える凄まじい第3楽章のヴィオラの旋律、あんな衝撃的な弱音を聴いたことは後にも先にもない。

そんな音楽に比べると、大人と子供、この日聴いたものは、大変上手なアマチュアオーケストラという感じだ。イチロー選手がWBCのとき、「向こう30年は日本に勝てないと思わせたい」という類の発言をして、韓国球界やマスコミから大反発を受けたことがあったが、ちょうどそんな感じ、30年の開きが彼我のオーケストラにあるかどうかは別にしても、個々のプレイヤーの技倆はともかく、集合体としてのオーケストラが紡ぎ出す音楽の質では、相当な開きがあるように思える。そういえば、技術的には優れていても演奏そのものの感銘度は低いというようなことが、30年前には日本のオーケストラに対して言われていたような気もする。

もっとも、感銘度の低さは、チャン・ユンスンという若い指揮者の問題なのかも知れない。スコアにある音を正確に鳴らしているのだとは思うが、のっぺりとして表情がないし、微妙なテンポの変化があるわけでもない。楽譜に忠実に何も考えずに演奏すると、こういうショスタコーヴィチになるということに驚く。メンバーのレベルは低い感じがしないので、過去にこのオーケストラの指揮台に立ったこともあるチョン・ミュンフンあたりが振ると全く違う演奏になるのかも知れない。しかし、ただ一度しか聴いていない私には判断がつかず。

時あたかも同じアジアの地で、このシンフォニーに描かれているのと同じ事件が起きているというのに、全く何のメッセージも発信しない脳天気さは韓国人らしいところかなあ。まさか茶番の南北会談に浮かれている訳でもないだろうに。

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