ドレスデン州立歌劇場「ばらの騎士」 ~ 外は木枯らし、内は
2007/11/18

久しぶりに神奈川県民ホールに来たら、ずいぶん老朽化しているなあという印象だ。シドニーのオペラハウスとはいかないまでも、港に面して立地はなかなかいい場所なんだが、内部はいかにもシャビー。NHKホールよりはまだマシとは言え、だだっ広くて古い会場で気分が高揚するには、よほどの素晴らしい舞台を見せてもらわないと…
 かなり前に指揮者が代わり、直前には元帥夫人役も代わるということで、いろいろと舞台裏が大変だったようだ。

元帥夫人:アンネ・シュヴァンネヴィルムス
 オックス男爵:クルト・リドル
 オクタヴィアン:アンケ・フォンドゥンク
 ファーニナル:ハンス=ヨアヒム・ケテルセン
 ゾフィー:森麻季
 指揮:ファビオ・ルイージ
 演出:ウヴェ=エリック・ラウフェンベルク
 舞台美術:クリストフ・シュビガー
 衣裳:ジェシカ・カルゲ

時代がかなり下ったような設定で、大戦の頃のような感じもあるが判然としない。違和感を感じるところと、さほどでもないところが混在、奇妙な舞台だ。

開幕、舞台下手奥にベッドがあるのに、二人の姿がない。冒頭のホルンの雄叫びとともにオクタヴィアンと元帥夫人が縺れあって登場、手前のソファのところで互いの衣装を猛烈な勢いで脱がせて、ベッドに潜り込む。えっ、これで、オーケストラのクライマックスと合うのかと心配、すぐに潮が引いていってしまうのに。いくら17歳の若者の性急さだとは言え、どう考えても無理があるぞ。シュトラウスの赤面するような音楽の流れと全く同期がとれていない。生々しい動きのある場面で始めたいという演出家の気持ちは判らなくもないけど…

変な幕開けだったけど、その後の第一幕はわりと普通。この調子でいくのかなと思ったら、第二幕、オックス男爵の配下の者たちの乱暴狼藉は、まるでストリートギャングかフーリガンのよう。第三幕でも怪しい人物たちが続々と登場、何が何だか判らないという始末。プログラムを買ったら、いろいろと演出の能書きがあるのかも知れないが、そんなものを読まないと理解できない演出なんて願い下げだ。

ファビオ・ルイージ指揮のオーケストラ、けっこう大雑把なところもあり、描いていたイメージとは違う。指揮者としては、かなり肌理細かくやりたいところが、オーケストラのほうは、まあまあこれでいいんじゃないという感じか。手慣れた演目のこと、安心して聴けるのだが、精妙さという点については思ったほどじゃないなあ。

歌い手では男声陣が立派。このオペラは三人の女声が中心だが、ちょっと弱い感もある今回の顔ぶれを補う男声陣の活躍だった。オックス男爵とファーニナルの力強い声と達者な演技は舞台を牽引していた。びっくりしたのは、テノール歌手、どこかで見た顔、聴いたことのある声だと思ったら、ロベルト・サッカではないか。チューリッヒで同じ役名(テノール歌手:アリアドネのバッカス)で聴いたのとおなじ、歳には見えない若々しくて全力投球の歌。あれれ、こんな脇役に彼が出るとは、豪華と言うか、男声優位の配役、これに極まれり。

しかし、女声陣の出来が悪かった訳じゃない。アンゲラ・デノケから代わったシュヴァンネヴィルムスは、貴族としての矜持というよりも、普通の生身の女性の心情に傾斜した歌ということろか。それはそれで悪くない。オクタヴィアンのフォンドゥンクはズボン役のときも、女性に戻ったときもなかなか魅力的。一方、ゾフィーの森麻季は舞台の上でどうしても浮いた感じだ。役柄的にそうなるところもあるが、演技が硬いのが他のキャストと違和感を感じるところ。もともと声量のある人ではないので、ボリューム感がないのは致し方ないが、柔らかい高音からふわっとクレッシェンドするこの人ならではの美質があるので、ドレスデンの檜舞台に立てたのだろう。それはこの日も聴けた。

さすがにドイツの歌劇場、二回の休憩が各30分、それは正確に演奏の終わりから始まりまでのインターバルのこと、普通なら20分と表示されるようなものだし、終演予定時刻もピタリ。これは遠征組にはありがたいこと。ホールを出たら木枯らし第1号、購入していた新横浜からの新幹線を繰り上げて、当日中に奈良に到着。

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